「お前。ふざけてんのか!」やはりネリは“悪童”だった…異例のグローブ交換要求に井上陣営は不信感を示し500gも下回った計量結果に因縁の山中慎介氏も不快感
ただ海外のメディアの取材は何件か受け「オレはここでは嫌われものでいい。オレがいなければ、この試合は成立しなかったんだ。たとえブーイングを受けようと何も気にならない。それを楽しむし、勝つのはオレ」と豪語したという。
井上は、戦闘モードに切り替わっていた。
フェイスオフでは、約1センチの超接近。JBCのスタッフが間に入るまで20秒間、目をそらさなかった。
「明日やるだけなんで。すでに駆け引きは始まっている」
殺気が充満していた。
短い囲み会見で、ネリの体格についての印象を聞かれでも「別に感想はない 。55.34キロまで落とすかどうかで。あとはリカバリー次第」と多くは語らなかった。
スーパーバンタム級に上げて3試合目。
「調整面では、もう3回目ってのもあるし、なんとなくつかんできた。フルトン戦もタパレス戦も別にリングの上での支障は全くなかった」
何ひとつ不安材料はない。
試合前に井上にひとつだけ聞いておきたかったことがあった。
ネリは事前のインタビューで「井上はこの試合を受けるべきではなかったと思う。井上はオレに勝っても何も得るものはない。むしろ失うものばかりだ。オレには失うもの何もない」と語り、プレッシャーがのしかかる井上とのメンタリティの違いが勝敗を分けるポイントになると示唆した。
チケットの99%が売れ、4万人を超えることが予想される歴史的リングに立つことは井上の大きなモチベーションに変わっているが、裏を返せば、初めて味わうプレッシャーになるのではないか。だが、そのメンタリティの違いが試合に与える影響をモンスターは、こう一蹴した。
「それに関しては何も思わない。背負うものがある、ない人間の差はないと思う。ネリに失うものがないから強いのかっていうと、別にそうではない。自分にはベルトが4本あり、何もかけていないネリの気持ちの方がどうかと言ったら、そこがこの試合に出ていたりすることはまったくない」
会見の最後。メディアの輪から出ていこうとした際に「意気込みを?」と聞かれた4団体王者は笑いながら、「今聞いてどうするんですか?やるしかないっしょ!」と大声を張り上げてメディアの爆笑を誘った。今日東京ドームで日本ボクシング界の歴史が塗り替わる。運命のゴングは20時24分に予定されている。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)