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五輪で3つのメダル、世界選手権では日本人初の連覇を果たした宇野昌磨が引退会見を開く
五輪で3つのメダル、世界選手権では日本人初の連覇を果たした宇野昌磨が引退会見を開く

なぜフィギュア世界3位の宇野昌磨は2年後の五輪を前に引退を決断したのか…憧れの羽生結弦氏の引退で見失った目標

 五輪のフィギュアスケートで日本人最多の3個のメダルを獲得した宇野昌磨(26、トヨタ自動車)が14日、東京都内で引退会見を開き、現役を退く決断への経緯やフィギュアスケートへの想いなどを率直に語り尽くした。今なお世界ランキング3位にいる宇野が引退を考え始めたのは2年前。憧れの存在だった羽生結弦氏(29)が引退した状況に「取り残されてしまった、という気持ちがあった」という。昨年12月の全日本選手権の優勝後に最終決断して周囲へ伝えた。今後はプロスケーターとしてアイスショーを中心に活動する。

 「悲しいというよりも前向きな気持ち」

 自身のインスタグラムで現役引退を電撃発表してから5日。東京都内で引退会見に臨んだ宇野は最後まで笑顔を絶やさなかった。
 会見のテーマを「次に向かってまたフィギュアスケートを全力で頑張ります、という気持ちを込めての発表」と設定。その上で胸中に抱く思いをこんな言葉で表した。
「悲しいというよりも前向きな気持ち。形は変わるかもしれませんけど、今後もプロとして自分が最善だと思うフィギュアスケートの形を全力で追い求めていきたい」
 脳裏に「引退」の二文字が浮かび上がったのは2年前の2022年だった。
 同年2月の北京冬季五輪で団体戦で銀、男子シングルで銅メダルを獲得。2018年の平昌冬季五輪男子シングルの銀メダルを合わせて、フィギュアスケート史上で日本人最多となる3個のメダルを獲得し、3月にフランス・モンペリエで開催された世界選手権では堂々の初優勝。24歳にして世界の頂点に立った。
 しかし、世界選手権ではソチ、平昌両五輪を連覇した羽生氏も、北京五輪を制したネイサン・チェン氏(25、アメリカ)も怪我で欠場していた。羽生氏は同年7月に現役引退とプロ転向を表明し、チェン氏も第一線から離れてイェール大学に復学した。
 背中を追ってきた2人が、揃っていなくなった。当時の思いを宇野はこう明かす。
「世界選手権で優勝したときに、引き続き頑張るという気持ちは変わらなかったですが、ゆづ君(羽生氏)の引退であるとか、ネイサン・チェンさんを含めた仲間たちの引退を聞いてすごく寂しい気持ちと、取り残されてしまったという気持ちもありました。そういったところから(引退を)考えるようになったのかなと思います」
 2022年11月に国際スケート連盟(ISU)が発表した世界ランキングで1位に輝くと、翌年3月にさいたま市で開催された世界選手権では日本人男子初の連覇を達成。それでも宇野は競技から離れた2人の背中を追いかけていた。
「彼らは僕にとって雲の上の存在。いつか同じ立場で戦えるようになりたいと常々思う2人でした。僕が果たしてそこにたどり着けたかどうかは、自分でもわかりません」
 昨年9月に所属するトヨタ自動車の社内メディア、トヨタイムズのインタビューを受けた宇野は、目の前に迫っていた2023-24シーズンへ向けた抱負をこう語っていた。
「僕がこういう結果(世界選手権連覇)を残せたからこそ、自分がやりたいスケートというものを目指したいと思っている。残っているスケート人生をかけて、僕が最初にやりたいと思ったことを、いまだからこそ体現したい」

 

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