• HOME
  • 記事
  • 五輪スポーツ
  • なぜフィギュア世界3位の宇野昌磨は2年後の五輪を前に引退を決断したのか…憧れの羽生結弦氏の引退で見失った目標
五輪で3つのメダル、世界選手権では日本人初の連覇を果たした宇野昌磨が引退会見を開く
五輪で3つのメダル、世界選手権では日本人初の連覇を果たした宇野昌磨が引退会見を開く

なぜフィギュア世界3位の宇野昌磨は2年後の五輪を前に引退を決断したのか…憧れの羽生結弦氏の引退で見失った目標

 会見内で流された当時の映像を、宇野は自分を「彼」と言いながら振り返った。
「いまとなっては、すごく意識が高いな、と思います。引退してまだ間もないんですけど、それでも『彼はすごくよくやった』と僕は思っています」
 2023-24シーズンへ全力で臨みながら、抱き続けてきた「引退」の思いがはっきりと輪郭を帯びてきた。昨年12月の全日本選手権で、本田武史氏(43)や羽生氏と並ぶ男子歴代2位の6度目の優勝を果たした直後に、2020年から師事してきたスイス出身のステファン・ランビエール・コーチ(39)に、シーズン終了後の現役引退を伝えた。
 今年3月にカナダ・モントリオールで開催された世界選手権へ、最後の舞台になると万感の思いを秘めて臨んだ。ショートプログラムでシーズン世界最高得点をマークしながらもフリースケーティングではミスが続いて6位、総合では4位で3連覇を逃した。それでも演技を終えた直後の氷上で満開になった笑顔は、完全燃焼の証でもあった。
「毎日の積み重ねがあるなかで、昔はいい演技ができないと悔しがり、落ち込んでもいたのが、しっかりと笑顔で終えられる選手になれた。小さなころに僕がなりたいと思っていたスケーターに一歩近づけたんだ、と。結果を追い求める一方で、いまの自分の全力を見てみたいという思いもあったシーズンで、成功も失敗もたくさんあったかもしれないけど、両方とも等しく、僕にとっては宝物のような時間になりました」
 こう振り返った宇野は満を持して、次のステージへと向かう。2022年に「取り残されてしまった」と感じたのは、モチベーションの維持に加えて、すでに次へ歩み始めている羽生氏やチェン氏の背中が再びまぶしく見えたからだろう。
プロとしてフィギュアスケートを突き詰めていく自身のセカンドキャリアへ。すでに胸中はワクワク感であふれていると宇野はこう続けた。
「競技と近くなるかもしれないけど、そのなかでも毎日の練習が楽しくなるような、自分が心から踊れるような、自由に感じられるようなプログラムを作って、感情を前のめりに出せるような姿を披露できれば。そして、日々楽しいと思える先に『これをやらなきゃ』ではなく『これをやりたい』という気持ちを表現できる素晴らしいプログラムを、これから作れるんじゃないかな、と。そう思うと、いまからワクワクしています」

 

関連記事一覧