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山口(右)の右ストレートが鈴木の顔面にヒット(写真・山口裕朗)
山口(右)の右ストレートが鈴木の顔面にヒット(写真・山口裕朗)

井上尚弥の“親友”元Jリーガー山口聖矢が新人王1回戦でモンスターがネリ戦で見せた直伝の“ダウン克服術”で逆転判定勝利

 あわやダウンの一撃を浴びた3ラウンドの判定が勝敗をわけた。鈴木は、その一発だけだったが、山口はクリーンヒットを何発も当てていた。クリーンヒットと攻勢をジャッジの2人が支持してくれた。
 控室に戻ると井上が待っていた。
「危なかったよお」
 そう声をかけられた。
「ガードが低い。そこは意識してやっていかなきゃね」
 親友の言葉が心に響いた。
 2人は通っていた幼稚園が同じでたまたま色も形もサイズも一緒だったシューズを片足ずつ間違って自宅へ履いて帰ったことが縁で意気投合した。そこから家族ぐるみの親交が始まり、幼稚園では2人ともサッカークラブに所属していたが、その後、井上はボクシング、山口はサッカーへと進み、以来28年間、交友が続いている。
 Jリーガー時代の山口のポジションはディフェンダー。山梨学院高(当時・山梨学院大附属高)から関東学院大へ進み、地域リーグのサウルコス福井に所属しSC相模原でJリーガーになった。大学時代には日本代表の伊東純也との対戦経験もある。だが、J1ではプレーできず、2018年シーズンを最後に25歳で引退した。当時、相談を受けた井上は「第2の人生へ進むのならば早い方がいい」と引退を勧めた。 
 山口は親友の言葉に納得して実家が経営している自動車整備工場で働きだしたが、サッカーという生きがいを失った山口は「何か刺激が欲しい」と思い悩む。そんな親友の苦悩を見た井上から「ボクシングをやってみたら」と意外な提案を受けたのが2022年の正月だった。山口は28歳にしてボクサーの道に進むことを決断し、昨年8月のプロデビュー戦は1回TKO勝利、今回のプロ第2戦目が逆転の判定勝利となった。
「もっと経験を積まなければと思いました。倒さなきゃで挑んだが、倒せなかった。そこは悔しい」
 課題は明らかだ。打撃戦となるとディフェンスが疎かになる。井上が指摘したガードもそうだが、頭の位置がまったく動いていない。破壊力はあるが、ジャブとワンツーだけで、世界への登竜門でもある新人王戦を勝ち進むには限界がある。
 もちろん山口も現状を理解している。
「まだ勝ったといってもスプリットの判定。接戦だったので“(新人王の)優勝を目指します”より、1試合、1試合勝っていけば決勝も優勝も見えてくる。一番上を意識するよりも次の試合。経験が浅いんでスパーをもっとやって次は倒せるように頑張っていきたい」
 東日本新人王の頂点まで残り3試合。そして、その先には西日本代表との全日本新人王の決戦が待っている。
「全日本新人王は、ボクシングを始めた頃からの目標。それを取ることで感謝の意味を込めて、大橋ジム、トレーナー、そして井上家への恩返しにできたら」
 どれだけ進化できるか。そこがカギだ。

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