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佐々木尽の左フックがノイナイの顔面をえぐる(写真・山口裕朗)
佐々木尽の左フックがノイナイの顔面をえぐる(写真・山口裕朗)

ド迫力TKOでウエルター級“アジア2冠”ゲットの佐々木尽は世界を狙えるロマン砲か、それとも未完の大器か?

「手ごたえはある。自分の実力はこれじゃない。(世界へ)いける自信がある」
 佐々木はそうも言うが、ディフェンスに隙は多くノイナイの不用意なカウンターを受けるシーンも度々あった。まだ攻撃のバリエーションも足りない。ウエルター級の世界のレベルの高さを考えると、今はまだ世界ランキングに実力が伴っていない。
「待ってろ!世界!」と叫んだ佐々木自身は、何も勘違いしているわけではなく「無理なのはわかっている、この内容だと勝てないとわかっている」と現状を把握している。
 中屋会長は、「実力を証明してから世界にいきたい。まずはそのレベルの本物とスパーをさせたい。これまで2度、アメリカで合宿をしたが、1回もいいコンディションでやったことがないのでそこで実力が見える。自力をつけさせたい」と言い、今後、米国合宿に佐々木を送り込む計画を明かした。
 そして「井上尚弥選手が信じられないことをやっている。22歳の佐々木は最年少ランカー。あと5年必死でやっていれば、信じられない位置にいくことはあり得ると思う」と続けた。
 中屋会長はプロモーターとして現地で地道に顔を売り、かつてゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)と淵上誠の世界戦をウクライナで実現したことがある。だが、現在日本のボクシング市場は大きく様変わりして、今回の試合をライブ配信したNTTdocomoのLeminoやAmazonプライムビデオなどの大手配信会社が、井上尚弥のようなビッグネームや話題の世界戦に莫大な資金を投入するようになった。大会シリーズを持っている大橋ジムや帝拳ジムの協力を得られれば、日本で佐々木のウエルター級での世界戦が実現する可能性も出てきたのである。中屋会長が期待するのもそこだ。
 だが、その前に世界に挑むに値する実力を手にしなければならない。昨年は豊嶋亮太(帝拳)、小原佳太(三迫)という実力派をキャンバスに沈めて着実に成長の姿を見せているが、まだ世界の物差しで見れば物足りない。
 それでも19戦17勝(16KO)1敗1分けの戦績が示すように一撃必殺の力を秘めた拳にはファンを魅了するロマンがあふれている。この逸材を“未完の大器”で終わらせてはならない。
「まだまだ強くなる」
 髪をライオンのようにゴールドに染めた22歳のイケメンは爽やかに誓った。

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