「井上尚弥が1位キープだ」「ウシクに敬意を払うべき」フューリーを撃破したウシクのヘビー級4団体王座統一で『PFP論争』が過熱
プロボクシングのヘビー級4団体統一戦が18日(日本時間19日)、サウジアラビアのリヤドのキングダムアリーナで行われ、WBA、IBF、WBO世界同級王者のオレクサンドル・ウシク(37、ウクライナ)がWBC世界同級王者のタイソン・フューリー(35、英国)を2-1判定で下して王座統一に成功した。ヘビー級の4団体統一は1999年のレノックス・ルイス(英国)以来25年ぶりで元クルーザー級の4団体統一王者のウシクにとって2階級4団体統一となり、これはテレンス・クロフォード(36、米国)、井上尚弥(31、大橋)に続く史上3人目の快挙。米の権威ある専門誌「ザ・リング」が制定するパウンド・フォー・パウンド(PFP)で現在、井上が1位に君臨しているが海外メディアやSNSでは「井上がキープだ」「いやウシクが1位だ」との論争が盛り上がっている。
2位のクロフォードはウシクの1位を支持
まるで“不沈空母”のようなフューリーの巨体がふらふらになった。
9ラウンド。ウシクの左フックが顔面を捉えるとフューリーがよろけるようにロープに下がった。ウシクは猛ラッシュ。118.8キロのWBC王者は、ロープに体を預けなければ立っていられなくなった。逃げるフューリーをウシクが追いかけて再び左フックをヒットさせるとロープをきしませて巨体が傾いた。ここでレフェリーが間に入ってスタンディングダウンを取った。なんとか意地とプライドでキャンバスに這うことだけは回避したが、もうグロッキー寸前だった。
だが、13キロの体格差は歴然としてあり、フューリーはボディで反撃を試みながら、ダメージを回復させて、両者は最終ラウンドのゴングを聞いた。
序盤はサウスポースタイルからプレスをかけてスピードを生かしたウシク。中盤は身長、リーチで上回るフューリーがジャブを操って支配。7ラウンドには強烈なアッパーも叩き込んだ。フューリーはロープをつかんでダンスを見せたり、舌を出して挑発したり、人を食ったようなパフォーマンスでサウジアラビアのサッカークラブでプレーするクリスティアーノ・ロナウドら多くの有名人が目立った観客席を沸かせたが、最後は、表情がこわばり、まったく余裕はなくなっていた。
判定はスプリットデシジョン。2人がウシクを115-112、114-113で支持、1人がフューリーの114-113だった。ウシクは、キャンバスに両膝をついて天を仰ぎ、感謝の意を示した。
「勝ったのはオレだ。彼の国(ウクライナ)は戦争状態にあるので、人々が彼の国に味方したんだ」
36戦目にして初黒星を喫したフューリーは判定結果を受け入れず、「最終ラウンドにオレの陣営が“お前は負けているぞ”と教えてくれていたら倒すこともできたんだ」と豪語。
両者の間には再戦条項があり、フューリーはリング上では「10月に再戦だ」と叫んだが、記者会見では「まだわからない」とトーンダウン。
ウシクも再戦を受け入れる姿勢を明確には示さなかった。
ウシクがまるで「アリと象」のような戦いを制してクロフォード、井上尚弥に続く2階級4団体統一を成し遂げたことで「PFP(階級を超えた最強ランキング)1位は誰だ?」の論争が海外メディアやSNSで活発になった。
リング誌が毎月更新している最新のPFPランキングでは、6日の東京ドーム決戦で、元2階級制覇王者のルイス・ネリ(メキシコ)に1ラウンドにダウンを奪われるものの3度ダウンを奪い返して6ラウンドTKO勝利した井上が、2年ぶりに1位の座に返り咲いた。2位はクロフォードで、3位がウシク。その井上にトップの座を明け渡したクロフォードは試合直後にXを更新した。
「みんなウシクという男に敬意を払うべきだ。彼は間違いなくPFP1位の候補者だ。オレは彼を嫌ったりはしない。彼は今までと同じように上の階級で相手を倒してきた男を破ったんだ。ブラザーに敬礼!」
ウシクの1位を支持する姿勢を明かした。