“カリスマ”辰吉丈一郎は東京ドームでネリを倒した井上尚弥の一体どこを「凄い」と思ったのか…ウシクに抜かれPFP1位から2位に陥落も変わらぬ評価
井上はすぐには立たずカウント8まで膝をついていた。
試合後に井上は「8カウントまで膝をついて休む。そこの数秒が大事。日頃から考えるようにしていることが咄嗟にできた。ダウンしてすぐに立つと足のふらつきとかが出る」と説明している。
まだ残り時間は1分以上あったが、井上は、あらゆるディフェンステクニックを駆使して、最大の危機を乗り越え、2、5ラウンドに左フックでダウンを奪い返し、6回にコーナーにはりつけて右ストレートでネリをキャンバスに沈めた。
東京ドームでのボクシング興行は、1990年2月のマイク・タイソン(米国)対ジェームス“バスター”ダグラス(米国)の“世紀の番狂わせ”以来、34年ぶりだったが、そのタイソン戦のアンダーカードにプロ2戦目の辰吉も出場し、バンタム級ノンタイトル10回戦でチュチャード・エアウサンパン(タイ)と対戦していた。辰吉が左ボディーでダウンを奪い、2ラウンドにKO勝利したが、辰吉も、偶然にも、この試合でプロ初のダウンを喫していた。やはり東京ドームには魔物が棲んでいるのだろう。
辰吉は、井上を「稀」「別もの」と表現した。
「あの子は、ほんまに凄いことをしている。2階級で4団体統一って、簡単にできることちゃうよ。ほんまに稀な選手やから、それができたのにマスコミの取り上げ方もそうやけど、それを当たり前のようにやっているから怖いわ。井上選手は別もん。他のボクサーと比べたらあかんねん」
リング誌が選ぶパウンド・フォー・パウンド(階級関係なしの最強ランキング)の最新ランキングでは、13キロの体重差をものともせずにフューリーからスタンディングダウンを奪い、2-1の判定勝利で史上3人目の2階級4団体統一を成し遂げたウシクに抜かれて、1位から2位に後退した。ネリ戦が評価されて、2年ぶりの1位に返り咲いてから、わずか10日間の“天下”だったが、今なお現役を貫く“レジェンド”の辰吉が「別もの」と評価するように井上の“凄さ”になんら変わりはない。
井上は9月に都内でIBF&WBOの同級1位のサム・グッドマン(豪州)、もしくは元IBF世界同級王者のTJ・ドヘニー(アイルランド)との防衛戦が予定されている。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)