なぜ阪神は1点差ゲームに強いのか…岡田監督が広島との首位攻防戦で見せた新井監督との壮絶な采配の駆け引き
阪神が23日、マツダスタジアムで行われた広島戦に2-1で勝利して、4カード連続の勝ち越しを決め、貯金は「7」となり首位をキープした。記念すべき1万試合目を白星で飾った。2位の広島との首位攻防戦での2日連続の1点差勝利で今季の阪神の1点差ゲームの成績は13勝3敗となった。なぜ虎は接戦に強いのか。
2日連続で虎党をハラハラさせた。
2-1で迎えた9回。
岡田監督は8日の広島戦で救援に失敗しているゲラをマウンドに送った。一死から矢野、石原に連打を浴び、代走羽月の好走塁もあって一、三塁の一打同点、長打が出ればサヨナラ負けの絶体絶命のピンチを背負った。9回表は、一死満塁から森下が三振、大山が遊ゴロで追加点を奪えず、阪神を重々しい空気に覆い、流れは広島だった。
スポーツ各紙の報道によると岡田監督は試合後に「あれだけチャンスを潰したら、普通ならやられるパターンやけどな」と振り返っている。
代打は松山。岡田監督は、ここで同点OKの守備隊形を敷く。内野を下がらせ、併殺を狙いにいったのだ。先攻めなのにあえて1点を守りにいかなかった指揮官の決断はズバリだった。
ゲラがカウント1-0からインハイに投じた156キロのストレート。松山は、おそらく見送ればボールだったかもしれない難しいボールを引っ張った。セカンドの中野が冷静にさばき、ショートの木浪がベースに入ってくるタイミングを見計らって送球。4-6-3のゲッツーを成立させてのゲームセットである。もし中野ポジショニングが前であれば、抜けていたかもしれなかった。ベンチ、バッテリー、中野の3者の思惑が一致しての1点差勝利である。
前日のゲームも2-1の薄氷勝利。これで阪神の今季の1点差ゲームの成績は13勝3敗となった。対照的に敗れた広島の1点差ゲームは、ここまで4勝9敗だ。とにかく阪神は接戦に強い。優勝した昨年も27勝16敗。なぜ阪神は1点差ゲームに強いのか。
巨人OBで元ヤクルト、西武監督として日本一となった“球界大御所”の広岡達朗氏は、スポーツライターの駒沢悟氏のインタビューに答え「接戦のゲームをものにするかどうかはベンチワーク。監督の采配だ。岡田監督の円熟の采配に対抗できる監督はセにはいない」と絶賛していた。
もちろん接戦の強さの背景には、逃げ切れるだけのブルペンの質の高さと、層の厚さに加えて守備力があるのだが、その能力を最大限に引き出す、岡田監督の継投策、そしてタイムリーが出ずともなんとかして1点をもぎとる巧みなベンチワークがある。
両軍ベンチの采配力の差を示すような壮絶な駆け引きが2度あった。
まずは1-0で迎えた7回。
投手の西から始まる打順で岡田監督が先に仕掛けた。球審に左の代打前川を告げる。新井監督は、6回を無失点に抑えていた中崎を一度はマウンドに向かわせていた。だが、前川のコールを聞くと中崎を下がらせ、左腕の塹江にスイッチした。中崎をマウンドに向かわせたのは左の代打誘い出す駆け引きだったのか。だが、この動きも岡田監督は百も承知。代打の代打にミエセスを送り、そのミエセスが四球を選んだ。
代走に植田、近本は三塁ゴロに倒れ、走者を進めることはできなかったが、続く中野の打席でカウント2-1からエンドランを仕掛けた。
走者のスタートと、中野のボテボテのゴロが幸いした。一瞬、投手に任そうかと躊躇した一塁の坂倉が捕球し、振り向きざまに一塁ベースへ向けてトスしたが、そこにはカバーが誰もいず、ボールが転々とする間に近本も三塁へ進塁したのだ。ベース寄りに深く守っていた菊池のカバーは間に合っていなかったが、一塁が本職ではない坂倉は、確認もせず「来ているだろう」の見込みでトスした軽率なプレーが傷口を広げた。