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  • なぜダービーで9番人気ダノンデサイルが歴史的“番狂わせ”を起こせたのか…「馬は大事にすれば返してくれる」…背景に皐月賞を回避した56歳の横山典騎手の“勇気ある決断”
日本ダービーを制したのは皐月賞では競走除外だった9番人気のダノンデサイル。横山典騎手は最年長ダービージョッキーとなった
日本ダービーを制したのは皐月賞では競走除外だった9番人気のダノンデサイル。横山典騎手は最年長ダービージョッキーとなった

なぜダービーで9番人気ダノンデサイルが歴史的“番狂わせ”を起こせたのか…「馬は大事にすれば返してくれる」…背景に皐月賞を回避した56歳の横山典騎手の“勇気ある決断”

皐月賞をスキップした陣営はダービー1本に絞った。
 そこからの6週間。騎手、調教師、厩舎スタッフが総力を挙げて仕上げ、馬も耐えた。
 1週前には横山騎手が騎乗してCウッドコースで併せ、6ハロン79秒6、ラスト1ハロン11秒0の猛時計。最終追いは安田調教師が乗って、4ハロン855秒5、ラスト1ハロン213秒3と絶妙なさじ加減でソフトに仕上げた。
 そして何よりダノンデサイルには「大事にしてくれた」陣営の恩義に答えるだけの能力が備わっていた。この馬の凄さを物語るエピソードのひとつが京成杯での”脱糞事件”だ。
 なんとレース中の2コーナー付近で“ボロ”を漏らしたとしてSNSでも話題になった。安田翔伍調教師も、これには苦笑い。実は微妙なフォームの違いに横山騎手も気づいていたという。便意をもよおすのは生理現象だが、それだけ緊張状態ではなかったという証。メンタルも含めて、ダノンデサイルは大物だった。無敗の皐月賞馬ジャスティンミラノに2馬身差をつける完勝は決してフロックではない。
 G1初制覇となった安田調教師の父の安田隆行氏は騎手としてトウカイテーオーでダービーを制覇しているが、調教師としては勝てないまま息子に厩舎の責任者を譲った。父の果たせなかった悲願を成し遂げる勝利でもあった。また今回のダービーでは産駒の父子3代制覇が話題になっていたが、ダノンデサイルの父エピファネイア、その父シンボリクリスエスはともにダービー2着馬だった。さらにダノンキングリー2着、ダノンベルーガ4着と、ダービーには縁のなかったダノックスの野田順弘オーナーや3着に終わったテイエムオペラオーを担当した原口厩務員にとっても悲願の戴冠となった。
 関西に拠点を移して以降、多くの厩舎に信頼され、存在感を高めている横山騎手の2人の息子の和生、武史も騎手の道を進んでいる。横山武は、4番人気のアーバンシックに騎乗していたが11着に沈んだ。まだ2人の息子は誰もダービーを勝っておらず父の威厳を示した。
 「ダービーで2勝した後でまだ運が残っていたら息子にやりたいって話したんですけど、まだやりたくないね。第100回ダービーに乗りたい。(武)豊さんと一生懸命、体をこすりながら」
 56歳の最年長ダービージョッキーは、そう言って豪快に笑った。

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