「対戦したいならお前らが(階級を)下げてこい」なぜ井上尚弥は敵前逃亡のグッドマンに理解を示して無謀な対戦要求を突きつけるフェザー級王者達へ怒ったのか?
異例の事態を受けて9月の対戦相手はドヘニーが最有力となった。元IBF世界同級王者。東京ドーム大会のオープニングマッチにネリが体重超過した場合のリザーブ選手として登場、ブリル・バヨゴス(フィリピン)を4回TKOに沈めた。サウスポーで真っ向打ち合う超好戦的スタイル。26勝(20KO)4敗の戦績と、そのムキムキの肉体が示す通りに、この階級では屈指のパワーがある。
大橋会長が「3連勝しているし、もしネリがダメでドヘニーが来たらやり辛いよなという話をしていた」と警戒するハードパンチャーだ。
井上は「ドヘニーも候補としてあがっている。頭の片隅にはある。これから交渉が進むと思う。自分はフラットな状態で練習を再開しようと思っている」と多くを語らなかった。
ドヘニーは昨年3月に豪州に乗り込みIBFインターコンチネンタル&WBOオリエンタルス―パーバンタム級タイトルマッチとして、2冠王者のグッドマンに挑戦、3回にカウンターの左フックを浴びてダウンを喫し、ジャッジの1人がフルマークをつける大差の0-3判定で敗れている。その後、再起して3連勝はしているが、井上がどうモチベーションを維持するかは不安材料ではある。
ただ井上は「それはない。誰が相手でも強さを見せる意味では変わりはないかな」とキッパリ否定。「右(構え)か左(同)かだけがなんとなくわかっていればスパーリングがやりやすい。本格的に相手をイメージして詰めていくのは、1か月半とか、1か月前なので焦りはない」と続けた。
グッドマンが対戦を見送った一方で対戦を熱望する声は後を絶たない。それもスーパーバンタム級ではなくひとつ階級が上のフェザー級王者からだ。IBF世界フェザー級王者のルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)は、「ドリームファイト」と書かれたフェイクポスターまで作ってXに投稿して対戦をアピール。プロモーターは「KOで勝てる。家を賭けてもいい」とまで豪語した。
WBA世界同級王者のレイモンド・フォード(米国)のプロモーターを務めるマッチルーム社のエディ・ハーン氏も「井上はどこかの時点でフェザー級に階級を上げるだろう。それはフォードがスーパーフェザー級に階級を上げる前に行うフェザー級での試合になるかもしれない。ビッグマネーのイベントになるのは明らかだ」などとコメントしている。
また井上は、ネリ戦を評価されてリング誌が定めるパウンド・フォー・パウンド(階級関係無しの最強ランキング)の1位に2年ぶりに返り咲いたが、5月18日にタイソン・フューリー(英国)に判定勝利してヘビー級の4団体統一王者となったオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)に追い抜かれて“10日天下”に終わった。
その際「誰が1位にふさわしいか?」の論争が起き「もう井上がスーパーバンタム級で戦うべき相手はいない。階級を上げるべきだ」の意見が多く見られた。
これらの報道は井上の目に留まっており、「それに関しては言いたいことが色々ある」と怒りの持論を展開させた。
「スーパーバンタム級に敵がいないから(階級を)上げろ!というのもおかしい。そんなに対戦したいならおまえらが(階級を)下げてこいという話だし、ボクシングは階級制のスポーツなんだから。自分にも限界はある。フェザー級にいく準備はしているが、そこ(いつのタイミングか)は、まだなんとも言えない」