なぜ日ハム新庄監督の“奇策”山崎福也「6番・投手」が成功したのか…「暗黙のルール」を解除できず内角攻めができなかった阪神の西勇ー梅野バッテリー
セでは投手が打席に入った際には「暗黙のルール」が存在する。よほどの状況でない限り、ひとつ間違えればデッドボールにつながるような厳しいインコース攻めはしないという「暗黙のルール」である。
横浜DeNA監督時代にラミレス監督が「8番・投手」の奇策を続けたことがあったが、通常6番はあり得ず「9番・投手」が定位置。投手がつなぐ四球やヒットは、しばしば勝敗に直結するが、セのバッテリーは、原則として「暗黙のルール」を守り、投手に厳しいインコース攻めをすることはない。
山崎福が6番で起用された段階で、阪神バッテリーはその「暗黙のルール」を解除すべきだったが、西勇のようなベテランには、長年のクセが染みついており、しかもオリックス時代の元同僚で顔見知りの山崎福が相手では厳しくインコースを攻めることはできなかったのだろう。
もしそういう投手心理まで新庄監督が読んで山崎福を6番で起用したとすれば、単なる目立ちたがり屋のパフォーマンス監督ではない。
いつだったか阪神時代に共に現役生活を過ごすなど新庄を良く知る岡田監督は、「新庄には選手の能力を見極める力がある。あいつはアホちゃうよ」という話をしていたことがある。
この山崎福の一打は西勇の平常心を乱した。
無死一、二塁と続くピンチに伏見のバントをさばくと三塁へとんでもない悪送球。走者が1人還り、犠打野選&エラーが記録された。さらに水野にもライト前タイムリーを許して4失点。三塁ベンチで新庄監督の笑いは止まらなかった。
日ハムは5回にも元日ハム渡邉の痛恨のタイムリーエラーなどにつけこんで2点を追加。山崎福は初回、4回、5回、6回と4度先頭打者を出しながらも援護点をバックにテンポよくストライクを先行させ、変化球で阪神打線の打ち気を誘いながら、7回で102球を投げ、わずか3安打無失点に抑えた。日ハムOBの大谷翔平ばりの“二刀流”でリーグ単独トップの6勝目をマークした。
ヒーローインタビューで山崎福は「アマチュア時代を思い出して野球を全力でやっているなという最高の気持ちでした」と語った。
日大三高時代に2010年の選抜で、この甲子園のマウンドを踏み、エースとして準優勝に貢献。 打者としても大会最多タイ記録となる13安打をマークして、当時から打撃センスの非凡さを垣間見せていた。
6番を聞かされたのは球場入りしてから。
「うれしい気持ちでいっぱいでしたし、新庄監督に6番という打順に置いてもらったので、なんとかその期待に応えたかったので、よかったです」と結果的に自らを助ける決勝打となった打席を振り返った。
山崎の次戦先発予定はまたDH制の採用されない広島の本拠地マツダスタジアムでの6月4日からの3連戦。新庄監督は「暗黙のルール」に遠慮したのか…9番での起用を予告している。
(文責・RONSPO編集部)