なぜロッテは“ミラクル”を生みだせるのか…阪神に2試合連続サヨナラ勝利で19年ぶりの11連勝…ヒーローは現役ドラフトの愛斗
昨年の現役ドラフトでは、8年在籍していた愛斗がリストアップされていたことに一部の西武ファンからは「まさか愛斗を出すの?」との批判の声が出た。だが、レギュラーには定着できておらず中途半端な立ち位置だったことも確か。ロッテの移籍会見では「守りで投手を助けたい」と語っていたが「守備があってのバッティングですが、今日はバットでも、お返しできた」と笑った。
開幕1軍に名を連ねたが、結果を残せず4月下旬にファームに落とされ、交流戦から1軍に復帰したばかり。ファームでは「タイミングさえ取れれば、あとはバットを出すだけでおのずとヒットになる」とコーチからアドバイスを受けて打撃を基礎から見直したという。
それにしてもロッテは負けない。これで9回の同点劇は4戦連続だ。
愛斗曰く、「負けていても誰かが出ればつないでいける」との空気がベンチに流れているという。
ファウルで粘り、ボール球に手を出さないという基本を各打者が徹底している。打ち取れずに、じれた投手は、そのうちコースが甘くなるか、あるいは、ボールを投じることになる。3番打者の高部は、この日、1回の第1打席で5球連続ファウルで粘り、一人でビーズリーに13球も投げさせていた。
投手陣にもニューヒーローが飛び出した。
阪神との初戦に先発させる予定だった佐々木朗希の予期せぬ登録抹消で、前日は、美馬を緊急登板させ、この日は、2年目の田中がプロ初登板初先発。その田中は、最速151キロのストレートを軸に、コントロールに優れたスライダーとフォークを投げ分けて、5回84球を投げ、2安打6奪三振無失点に抑えた。
吉井監督は「最高のピッチング。私のプロ初登板は初回であっというまにノックアウトだったのに」と称え、田中本人も「最後まで自分のボールを投げ切れた」と振り返った。
1-0で迎えた5回には、先頭の渡邉諒に二塁打を許したが、一死三塁から、昨年の阪神の優勝を支えた“恐怖の8番”木浪から149キロの内角ストレートで空振りを取って、カウントを追い込み、最後は、外角スライダーでスイングアウト。阪神ベンチは、三振のない木浪のバッティングを信頼して三塁走者の渡邉にギャンブルスタートを切らせていた。まさかの空振りに飛び出していた渡邉は、佐藤からの送球に戻れず三振ゲッツーで無得点に終わった。
阪神打線は、4番に近本を入れ、中野、植田に1、2番を組ませ、大山を7番に下げるなど、打順を大シャッフルしてきたが、動揺することはなかった。