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広島の大瀬良大地がロッテ戦でノーノーを達成(資料写真・黒田史夫)
広島の大瀬良大地がロッテ戦でノーノーを達成(資料写真・黒田史夫)

なぜ広島の大瀬良はロッテ戦でノーノー偉業を達成できたのか…パワー投手全盛時代に見せた“対極”のプロ11年目の投球術

 

広島の大瀬良大地(32)が7日、マツダスタジアムで行われたロッテ戦でノーヒットノーランを達成した。巨人の戸郷翔征が5月24日の阪神戦で成し遂げて以来、史上90人目(102度目)の快挙で、広島では2012年の前田健太(現タイガース)以来12年ぶり5人目。またマツダスタジアムでは、2009年の開業以来初。2度の右肘手術を乗り越えて制球重視のピッチングスタイルにモデルチェンジ。プロ11年目での偉業達成となった。ここまで負けなしの3連勝で防御率争いでも1.07で1位に躍り出た。広島は4-0で勝利し3連勝。首位に浮上した。

 「まだ信じられない。(記録とは)縁がないと思っていた」

 大瀬良を中心にマウンドに輪ができた。
 大記録まであとアウトひとつとなって連続四球を与え、打席には元巨人の4番打者、ポランコを迎えた。
 2つ年上の菊池が声をかけた。
「あとひとつのアウトをみんなで取ろう」
大瀬良は笑顔でうなずき「打たせるから頼むよ」と返した。
チームメイトを信頼して、みんなの気持ちを力に変える。それが32歳になったプロ11年目の大瀬良のピッチング哲学だった。
「いつ打たれるかなと思いながら対戦していたんですけど、9回のマウンドに上がるときに大歓声を受け、せっかくここまで来たのならみなさんの前で(記録を)達成できたらいいなあと思って最後の気力を振り絞って頑張りました」
129球目。インハイの144キロのストレートだった。打球は「9回になるまで気付かなくて。すごい声援で完封だと思ったんですけど、スコアボード見たら(安打が)ゼロだったので一気に緊張しました」と言うライトの野間へ。大瀬良も「野間がちゃんと捕ってくれるかなと思いながら」打球の行方を見守ったという。
 野間が27個目のアウトを大事にキャッチ。それを確認した大瀬良は一呼吸を置いてから右手でガッツポーズ。マウンド上でウォーターシャワーの祝福を受けて両手を突き上げた。
「ちょっと、まだ信じられないというか自分のことじゃないような気持ちです。(ノーノーとは)無縁だと思っていたので今日も粘り強く投げたいなと思って投げていました」
 バッタバッタとロッテの打者を打ち取ったわけではなかった。
 三振はわずかに2つ。ストライクを先行させて丁寧に低めにボールを集め打たせて取るピッチングに徹した。外野フライが11個に内野ゴロが10個。2-0で迎えた6回に一死から代打の池田に四球を与えたが、続く1番の友杉を得意のカットボールを外角高めに投じて6-4-3のダブルプレー。これこそ大瀬良の真骨頂だった。
 上位打線に回る7回も三者凡退に抑えてベンチ内では、記録を期待する雰囲気が出始めた。新井監督は「7回からドキドキしていたが彼には何も言わずにいた」と、あえて無視を決め込んだという。
「何も言うことはない。なかなかお目にかかれないものを見せてくれて素晴らしかった」

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