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広島の大瀬良大地がロッテ戦でノーノーを達成(資料写真・黒田史夫)
広島の大瀬良大地がロッテ戦でノーノーを達成(資料写真・黒田史夫)

なぜ広島の大瀬良はロッテ戦でノーノー偉業を達成できたのか…パワー投手全盛時代に見せた“対極”のプロ11年目の投球術

 元阪神、ダイエー(現ソフトバンク)、ヤクルトでプレーした評論家の池田親興氏は、大瀬良のノーノーの理由をこう分析した。
「内、外と丁寧に投げ分けて粘りが信条のロッテの打者の読みをことごとく外していた。コントロールミスがほぼなかった。投球術のお手本だった。去年と今年のデータを比べるとストレートとカットボールが軸になっていることに変わりはないが、今年はその他の球種でスライダーの比重が減り、シュート、カーブが増えて偏りがなくなっている。ホームベースをワイドに使って、打たせて取る投球を極めている証だと思う。今年9度の先発でゲームを壊したことは一度もなく3勝0敗の安定感を維持できているのも納得。パワーピッチャー全盛の時代にあって、こういうピッチングさえすれば勝てるしノーノーもできるということを証明した。価値ある記録だったと思う」
 今季の大瀬良はモデルチェンジした。
 昨年に比べてストレートの割合が約4%減り、カットの割合が約4%増えて、ほぼ同数となり、次に多くを占めていたスライダーの割合が約半分となり、シュート、カーブの割合が増えた。池田氏が指摘するように球種のバランスを整え、相手打者に狙い球を絞りにくくさせて、より打たせて取る投球の幅を広げたのである。
 ここまで9試合に投げて3勝0敗。5回の責任イニングを完了できなかった試合は1試合もない。必ずゲームを作り、防御率は同僚の森下を抜く1.07でトップに躍り出た。しかも、58回3分の2を投げて被本塁打はゼロ。いかに低めにボールを集めているかを象徴する数字だ。


 2013年のドラフト1位。地方の九州共立大出身だったが、大学ナンバーワン投手の評価を受け、ヤクルト、阪神、広島の3球団が競合して担当の田村スカウトが引き当てた。入団当時は最速154キロのストレートで、ぐいぐい押す本格派。ルーキーイヤーから10勝をマークして、5年目の2018年には、15勝7敗で最多勝と最高勝率の2冠を獲得しチームのリーグ3連覇に貢献した。だが、2020年に右肘にメスを入れ昨年は6勝11敗に終わり、10月に2度目の右肘の手術。キャンプはスローペースとなり5年連続で指名されていた開幕投手の座を九里に譲り、6番目の先発として開幕を迎えた。新井監督は「去年は悔しいシーズンになり、5年続いていた開幕投手が途切れて“よし!見とけよ!”とスタートしたシーズンだと思う」と、その心中をおもんぱかった。
 大瀬良はプロ11年目のシーズンに見事にピッチングスタイルを変えてノーノーという大記録で完全復活をアピールした。
「僕自身は次の登板が大事だと思っているので、また次に向けて頑張ります」
 次戦の登板予定は14日の敵地での楽天戦。チームは巨人が敗れたことで首位に浮上した。32歳の“ノーノー男”が、混戦のセ・リーグを抜け出すための切り札となるのかもしれない。

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