なぜ井上尚弥は注目のフェザー級挑戦を2026年に設定したのか…「スーパーバンタム級であと4、5試合」…9月対戦相手はTJドヘニーで1本化
今回の渡米では表彰式の夕食会で帝拳に所属していて日本語が堪能な元3階級制覇王者のホルヘ・リナレスと交わした会話映像がWBAのSNSに投稿され、その中でフェザー級転級の時期を「あと1年」と話したことが大きな反響を呼んだ。
この日「あと1年」の真意を尋ねると井上は真摯に現時点での考えをこう明かした。
「リナレス選手との映像が出ていましたねえ(笑)。それについては、まあ、そのくらいというニュアンスです。あと1年。4、5試合は(スーパーバンタム級で)できる。今年2試合で来年いっぱい。イメージとしては(フェザー級挑戦は)1年先。まだ体の見通しもついていない。でも、感覚的には来年いっぱいで、なんとか(フェザー級の)体を作れるんじゃないかと」
日本人初の5階級制覇となるフェザー級挑戦は、来年ではなく再来年の2026年。今年は9月、12月と2試合の防衛戦が予定されているが、さらに来年2試合から3試合、スーパーバンタム級での防衛戦を重ね、その中で肉体改造にも取り組み万全の状態でフェザー級の挑戦しようというプランだ。大橋会長も「(フェザー級転級は)流れの中で」とフォローした。当日の体重がフェザー級リミットの57.15キロを5キロ弱ほど上回る62キロでリングに上がっている井上に対しては「すでにフェザー級で通用する」との声が多い。
だが、井上は、「ボクシングは階級制のスポーツ。限界がある」と簡単ではないことを認識している。さらにフレームの大きな選手が相手となり、耐久性も増しパンチ力も強くなる。フェザー級の肉体を作り上げると同時にそれに応じたスキルのバランスを整えなければならない。世界初となる3階級4団体制覇を狙うのであれば万全を期す必要がある。
ただ一方ですでにフェザー級の王者からは次から次へと挑戦状が届いている。IBF世界同級王者のルイス・アルベルト・ロペス(メキシコ)は、自ら「ドリームファイト」と評したフェイクポスターまで作って対戦をアピール。陣営のマネージャーは米専門サイト「ボクシング・シーン」の取材に答えて「井上をKOできる。家を賭けたっていい」と豪語した。 また6月1日にサウジアラビアで行われたビッグイベントでWBA世界同級新王者となったばかりのニック・ボール(英国)のヘッドトレーナーも前出の米サイトに「この先戦いたいのは井上。奴を動揺させることができる」と訴えた。そして井上が観戦した試合で8回TKO勝利したフェザー級の世界ランカーのブルース・キャリントン(米国)までが、挑戦状を叩きつけ、リングサイドの井上に向けて、お辞儀をするなど将来的な対戦をアピールした。またWBCが正規王者のレイ・バルガス(メキシコ)と暫定王者のブランドン・フィゲロア(米国)との統一戦を命じるなど、フェザー級では統一の動きも出ており井上が転級してくる再来年には、フェザー級戦線も変化しているだろう。