なぜ名門バイエルンは日本代表DF伊藤洋輝を4年50億6000万円の大型契約で獲得したのか?
「日本人センターバックは、昨シーズンにバイエルンを上回る2位に入り、復活を遂げたシュツットガルトの大黒柱として活躍した。見逃せないのは伊藤が左利きのセンターバックである点だ。この重要な資質とブンデスリーガで積み重ねてきた彼の実績を組み合わせれば、バイエルンが彼を好んだ理由を理解するのは決して難しくない」
ドイツのサッカー専門誌『kicker』も左利きである点に加えて、複数のポジションも務められる伊藤を「掘り出し物」とポジティブに評価している。
「25歳の左利きのディフェンダーは、バイエルンでは主に左のセンターバックとしてプレーすると見られるが、同時に左サイドバックでもプレーできる」
左利きのセンターバックは世界中で重宝がられる。日本代表でもハビエル・アギーレ監督が2014年9月のウルグアイ代表との初陣で、年代別の代表経験がなく、J1リーグ戦出場もわずか21試合だった当時23歳の左利きのDF坂井達弥を大抜擢。さらに先発させて、所属していたサガン鳥栖の強化担当者を驚かせたエピソードがある。
左利きの選手が4バックの左センターバックに入れば、自分の体の左側でボールを隠し、利き足でコントロールしながら相手のプレスをかわせるメリットが生まれる。さらにビルドアップでも体の向きを変えずに、すべての方向にパスを出せる。
2023-24シーズンのブンデスリーガ1部では、ショートパスやロングパスの部門で伊藤は上位にランクされた。ドイツ内外で評価は高く、最終的には伊藤本人が拒否したものの、1月の移籍期間にはポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド(39)が所属する、サウジアラビアのアル・ナスルからオファーを受けた。
ドイツの大衆紙『Bild』は、直近でもプレミアリーグのトッテナム・ホットスパーが獲得へ向けて、伊藤に関心を示していたと報じている。バイエルンを選んだのは来シーズンのチャンピオンズリーグにも出場できる名門である点に加えて、同紙は「家族が好んでいるドイツでの生活環境を変えないのも大きい」と伝えている。
静岡県浜松市で生まれ育った伊藤は、磐田の下部組織から2018シーズンにトップチームへ昇格。名古屋グランパスへの期限付き移籍をへた2020シーズンからは、当時J2を戦っていた磐田の最終ラインのレギュラーとして定着した。