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WBA世界ライト級王者のガーボンタ・デービスが8回KO勝利で5度目の防衛に成功。井上尚弥とのドリームマッチが期待されている怪物だ(写真・AP/アフロ)
WBA世界ライト級王者のガーボンタ・デービスが8回KO勝利で5度目の防衛に成功。井上尚弥とのドリームマッチが期待されている怪物だ(写真・AP/アフロ)

井上尚弥との夢対決プランもある“もう一人の怪物”WBAライト級王者デービスが“服役ブランク”を乗り越えて無敗挑戦者を8回KOで葬る…「オレは錆びついていない」

 敗れたマーティンは完敗を認めた。
「前半はいい展開でコントロールができていた。でもデービスのプレッシャーを弱めることができず、動き過ぎるのはダメなのか、と色々と考えてスローダウンしたのがよくなかった。徐々に展開が変わって自分の動きができなくなった。動きが止まると、ああいうことになる。いいパンチを浴びてしまった」
 デービスの規格外のパワーがマーティンのプランを破壊してしまったのである。
 2人は4年前のスパーリングで、つかみあいの喧嘩となり、当時デービスがプロモートを任せていた元5階級制覇王者のフロイド・メイウェザー・ジュニア(米国)が止めに入るほどの因縁があった。途中、ラウンド終了後にデービスが何やらわめき散らすなどピリピリした緊張感もあったが、無敗のマーティンでさえ“タンク”の敵ではなかった。

 昨年4月に、元WBC世界ライト級暫定王者の“奇人”ライアン・ガルシア(米国)を7ラウンドにボディショットで倒して以来、リングから遠ざかった。
 昨年6月にボルチモアの拘置所で44日間服役した。2020年に11月に4人が負傷するひき逃げ事件を起こして、90日間の自宅軟禁の判決を下されたが、それを無視して許可なく高級ホテルや新居で生活していたことが発覚したためだ。これまで何度も逮捕を経験している問題児のデービスだが、今回ばかりは、心を入れ替えたという。
「忍耐を学んだ。オレをより良い人間にしてくれた。人生における、こういう物事は乗り越えなければならない。決して逃げてはいけない。おかげで、オレはより良い人間になり、より良い父親になり、より良いアスリートになった。最も重要だったのは、初心に返り、ジムで集中力を維持したということだ」
 気になるのはデービスの次戦である。
 ライト級には、IBFが王者に復帰した3階級制覇王者のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)、WBCがシャクール・スティーブンソン(米国)と強敵が揃っている。
 しかし、デービスは対戦希望の具体名を出さなかった。
「ジムに戻って錆びついた部分をもっと磨く。オレのレーダーに引っかかる相手と戦うよ」
 そして、もう一人、ファンの間で待望論があるのが、井上尚弥だ。
オイルマネーを背景にビッグファイトのプロモートを続けているサウジアラビアの王族で娯楽庁の長官であるトゥルキ・アラルシク氏が、米専門メディアの取材に対しドリームカードとして「デービスvs井上」を提案。「彼らが適正体重で適切な提案をしてくれれば、それを私は実現できる」と断言したことで、世界中に反響が広がった。確かに、この日のようなKOシーンを見せられると、現在、世界戦で8試合連続KO勝利中の井上とのモンスター対決を、サウジの王族やファンが熱望するのも無理はないだろう。
 だが、現実問題としてデービスは61.23キロがリミットのライト級で、井上は55.34キロがリミットのス―パーバンタム級。両者には5.89キロもの体重の壁があり対戦は難しい。
 デービスも「もしオレが130パウンド(58.97キロ、スーパーフェザー級)まで下げられて、彼(井上)も少し上げられれば、あり得ないこともないが、彼と対戦することは正直イメージできない」と否定的だった。井上はフェザー級への転級を2026年に定めており、キャッチウエイトでも、実現の可能性は低いが、ファンを魅了する“2人の怪物”の今後の戦いに注目が集まる。

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