なぜセレッソDF毎熊晟矢の「遅すぎる」オランダAZへの移籍が実現したのか?
セレッソ大阪は21日、森保ジャパンで8試合に出場しているDF毎熊晟矢(せいや、26)がオランダ1部リーグのAZへ完全移籍したと発表した。契約期間は2028年6月末までの4年間で、背番号は毎熊が自ら希望した「16」に決定。10月に27歳になるシーズンでのヨーロッパ挑戦に、オランダからオンライン会見に臨んだ毎熊は「自分でも遅すぎると思っている」と本音を明かしながら、2年後の北中米W杯出場を見すえて、新天地でさらに成長すると意気込んだ。
「攻撃のアイデアが豊富で菅原より熟練」
新天地AZのトレーニングウェア姿でオンライン会見に臨んだ毎熊が、10月に27歳になるシーズンでのヨーロッパ挑戦へ本音と抱負を語った。
「不安はありません。ただ、自分でも遅すぎると思っているし、もう若くはないからこそ1年1年が、1日1日がすごく大切になってくる。この年齢からでもこれだけできるんだと証明できるように、やっていきたいと思っています」
海外クラブへの完全移籍を前提とした準備のため、毎熊がチームを離脱するとセレッソから発表されたのが今月13日。毎熊はその後にオランダ北西部のアルクマールへと向かい、2023-24シーズンの同国1部リーグ、エールディヴィジで4位に入ったAZのメディカルチェックをへて、21日に正式な契約を結んだ。
契約書にサインする毎熊の写真を掲載したAZのクラブ公式HPは、2028年6月末までの4年契約で、背番号が「16」に決まったと伝えた。東福岡高から桃山学院大学、J2のV・ファーレン長崎をへて2022シーズンに加入したセレッソでブレーク。日本代表入りも果たした毎熊の感謝の思いが、自ら選んだ「16」に凝縮されている。
「長崎では『16』でしたし、セレッソでも最初は『16』でした。2つのクラブにはいまも感謝していますし、AZでも同じ心境で戦いたいと思ったので選びました」
原点に返ってAZでも挑戦する、という決意を背番号に込めた。もっとも、昨夏の時点で毎熊の視線はセレッソでのプレーに向けられていた。海外志向が一気に強まったきっかけは、同9月に初めて招集された森保ジャパンだった。
日本がドイツ、スペイン両代表を撃破し、ベスト16へ進んだカタールW杯を通じて、毎熊は「海外組の存在感やタフさが際立っている」と感じていた。さらに自らも日の丸を背負い、MF中村敬斗(23、スタッド・ランス)のゴールをアシストしたトルコ代表とのデビュー戦を境に異なる思いが頭をもたげてきた。
「それまではJリーグでもやれると思っていましたけど、実際に代表に入ると海外組との大きな違いを肌で感じるようになり、自分も意識するようになりました」
以来、チャンスがあれば海外に挑戦したいとセレッソに伝えてきた。小菊昭雄監督(48)にも思いの丈を伝え、背番号を「16」から「2」へ変え、副キャプテンの1人にも就任した今シーズンの開幕を前にして「夏にどうなるのかはわからないけど、それまではリーグ戦の首位でいられるようにしよう」と約束をかわした。
そして、ヨーロッパの夏の移籍期間が幕を開けるとともに、エールディヴィジで7シーズン続けて5位以内に入っているAZからオファーが届いた。最新のJ1リーグ順位表でセレッソは6位。首位を置き土産に旅立つ約束がかなわず、逡巡した時期もあった毎熊は最終的に夢を追いかける決断をくだした。
AZには第2次森保ジャパンの常連で、毎熊と右サイドバックのポジションを争う菅原由勢(ゆきなり、23)が居場所を築きあげている。もっとも、在籍5シーズン目を終えた菅原には、ステップアップ移籍の可能性が取り沙汰されている。
同クラブのフットボール・ディレクター(FD)を務めるマックス・ホイバーツ氏も、毎熊獲得を伝えたクラブ公式HP上で「このオフに菅原が移籍する可能性が高い」と明言。その上で毎熊に白羽の矢を立てた理由を次のように語っている。