なぜ中日の立浪監督は「2人の元阪神戦士を見習え！」と発言したのか…板山と山本の貢献で首位の広島に2－1勝利しカード勝ち越し

　板山は、岡田監督が就任する前には現役ドラフトにリストアップされるところだった。岡田監督が再起への期待を込めて、リストから外させたが、昨年は結果を残すことができずにオフに戦力外となった。山本は、阪神の内野陣が三塁は佐藤、ショートが恐怖の8番としてブレイクした木浪、二塁が最多安打の中野と固まり、しかもリザーブに小幡、トレードから来た渡邉らがいるチーム事情で、1軍の戦力とはなれずに戦力外となった。だが、立浪監督は、2人の技術に目をつけ、すぐに獲得に動いた。2人の虎戦士には、再チャンスをもらった立浪監督への恩義があり、対阪神への意地もある。なにより生き残りにかける強い気持ちがある。山本は5回に野間のセンターに抜けそうな打球を飛び込んで止めて一塁でアウトにした。板山も8回に先頭の小園の打球をファインプレーでアウトにした。立浪監督が「見習え！」と号令をかけたのは、戦力外を味わった男たちのそういう執念にもあるのかもしれない。
　一方で笑えないベンチのミスもあった。
　1－1で迎えた7回。2番手の斎藤が二死三塁から野間に四球を与えてファンプレーで勢いに乗る上本を迎えたところでタオルを持った大塚投手コーチがマウンドへ向かった。ベンチでは、スコアラーの佐藤がブルペンに電話をしていた。立浪監督は、右腕の清水にスイッチする考えだったのだろう。だが、立浪監督と大塚投手コーチのコミュニケーションが取られておらず、大塚投手コーチはファウルラインを越えてベンチに戻ってしまったのだ。立浪監督が、球審に清水を告げたが、投手コーチがベンチに戻るためにファウルラインを越えた時点で交代はルールで認められない。仕方なく続投となった斎藤が、上本を空振りの三振に仕留めて、ベンチのミスを帳消しにしたが、もし勝ち越しを許していれば、大問題として取り上げられていただろう。
「今日も非常に厳しい展開ではありましたけど、最後よく逆転したなというところはあります」
　立浪監督は、試合後、そう語ったが、まさに危ない勝利だった。
　左肩を脱臼した村松が離脱する可能性も高く、この勝利に手痛い代償もついた。だが、リーグ戦再開の最初のカードで首位の広島に勝ち越した。最下位を脱出できてはいないが、巨人に敗れた5位のヤクルトとはゲーム差がなく、Aクラス圏内の3位の横浜DeNAまでは3ゲーム差。“混セ”の中にあって戦える位置はキープしている。