“あの”世界王者と高校時代にスパーで互角に渡り合った“都市伝説”を持つ大物ルーキー吉良大弥が118秒KOデビュー…「偉大な先輩の井岡一翔さんを超えたい」
真偽のほどは定かではないが見どころのあるスパーをしたことは確かだろう。ただ、5月25日から約3週間、7月7日にIBF世界同級王者フェルナンド・マルティネス(アルゼンチン)との統一戦を控える井岡の米国ラスベガス合宿に同行した際、正真正銘の伝説は作ってきた。
井岡がパートナーに呼んだWBC世界フライ級5位のアンジェリーナ・コルトバ(ベネズエラ)と一度だけスパーする機会があり、1ラウンドの予定が、吉良が優勢だったことから、コルトバから、“オネイチ”が入り、2ラウンドになったというのだ。
担当の佐々木修平トレーナーが「大弥が優勢だったので“納得がいかないからもう1ラウンドやらせてくれ”と言ってきたんです」と証言した。
コルトバは3月にWBC世界フライ級王者のフリオ・セサール・マルティネス(メキシコ)に挑戦、一人がドローをつける0-2判定で、20戦目にしてキャリア初黒星を喫した強豪。昨年4月には元WBO世界ライトフライ級王者のアンヘル・アコスタ(プエルトリコ)に判定勝利している。2ラウンドとはいえ、その世界トップ級のボクサーを相手に優勢にスパーを運んだのだから、5勝(3KO)2敗のタイ人を秒殺するのも納得だ。
チャンピオンメーカーの佐々木トレーナーが、こう補足する。
「リストが強いのが特徴。だからいろんな角度のパンチが打てる。パンチもある。間違いなく世界にいきますよ」
リング上では、慣れないインタビューにおどおどしていたが、こう豪語した。
「世界は通過点。それを意識しないと。その先のパウンド・フォー・パウンド1位を目標にしている。井岡一翔さんは、ジムの偉大な先輩なので、そこを目指して、そこを超えないといけないと思う」
世界を通過する時期も決めていない。
「すべてを通過点を思わないと成長が止まる」
しかし近未来の絵はしっかりと描いている。
「慎重に試合を重ねてと思っていたけれど、どんどん、次、次いこうかな。すぐに(地域)タイトルマッチとかをやりたいですね」
デビュー戦はスーパーフライ級となったが、通常体重は57、58キロのため、まずはフライ級に照準を定める。陣営では、次戦は8回戦でアジアの上位ランカー。そこでランキングを上げて3戦目にWBOアジアパシフィックか、OPBF東洋太平洋のタイトルに挑戦させたい意向を固めている。同じく3戦目で、OPBF東洋太平洋フェザー級王座を獲得したジムメイトの堤駿斗と同じ路線だ。
最後に吉良大弥は本名である。トランクスにはダイヤモンドをデザインしたマークをつけていた。会場の外を奔走していた母親が、その由来を教えてくれた。
「原石を自分で磨いてダイヤにしなさいと言う願いを込めました。私のお腹にいるときから決めていました。キラ・ダイヤという言葉のゴロの良さもありました(笑)」
まだ原石。キラキラしたダイヤモンドの輝きを手にするのは、まずは通過点としている世界ベルトを腰に巻いた時だろう。
(文責・本郷陽一/ROSNPO、スポーツタイムズ通信社)