16歳の“逸材ランナー”ドルーリー朱瑛里の本当の実力とは?初出場の日本選手権では1500m決勝に進むも7位に終わる
世界を目指すドルーリーを考えるうえで、参考になるのが小林祐梨子のタイムと成長曲線だろう。小林も中学時代から大活躍してきた逸材で、ふたりの中学時代のベストタイムは同じくらいなのだ。
小林は800mが2分09秒38、1500mは4分24秒11、3000mが9分21秒07。一方のドルーリーは800mが2分09秒47、1500mは4分22秒60、3000mが9分20秒46だった。
では高校1年時のタイムを比べるとどうか。小林は800mが2分05秒84(高1最高)、1500mは4分16秒61。ドルーリーは800mが2分07秒77、1500mは4分15秒50(高1最高)だった。
ただ小林は2年時(05年)に日本選手権の1500mを4分15秒44で優勝。この年、1500mは4分12秒85(高2最高)まで短縮して、3000mでは8分52秒33の高校記録を打ち立てた。なお小林は3年時(06年)に1500mで4分07秒86の日本記録(当時)を樹立。この記録は現在も高校記録として残っている。ドルーリーは高校2年の日本選手権としては、小林に〝完敗〟したかたちになるだろう。
シニア選手との戦いを終えたドルーリーは、「決勝では自分が思うようなレースができずに終わってしまった悔しさがあるので、その課題を修正して次に向けて頑張りたいと思います。自分の強みを生かせるような走りをしたいです」と話すと、1カ月後のインターハイに向けては、「高校記録更新を目標に頑張っていきたいと思います」と意気込んでいた。
今後は小林が持つ高校記録(4分07秒86)がターゲットになるが、どこまで近づくことができるのか。
日本はインターハイという大きな舞台があることもあり、ジュニア期のレベルが高い。その反動か、厳しい現実がある。女子1500mで高校歴代10位の記録を持つ選手のうち、高校卒業後に1500mの自己ベストを更新したのは、田中希実しかいないのだ(※ドルーリー以外の9人は高校を卒業済)。
高校記録保持者の小林は5000mで北京五輪とベルリン世界陸上に出場しているが、1500mは高校時代の自己ベストを更新することができなかった。
1500mのパリ五輪参加標準記録は4分02秒50。スパイクの進化もあり、世界は高速化が進んでいる。現状、田中以外の日本人選手が1500mで世界大会に出場するのはかなり難しい状況だ。
ただドルーリーは陸上強豪校ではなく、地元の進学校で競技を続けている。練習量は多くないようなので、まだまだ伸びしろはあるだろう。
それでも過剰報道が続けば、競技へのモチベーションに影響が出る可能性もある。ドルーリーは田中希実のように日本中長距離界の〝希望の星〟になれるチャンスがある選手。過度な期待をかけず、高校生らしく伸び伸びと競技ができる環境を大人が作っていくべきだろう。
(文責・酒井政人/スポーツライター)