「勘違いするな!三塁コーチの判断にギャンブルはない」のセオリー…阪神の岡田監督が9回に本塁突入させて失敗した藤本コーチを叱責した理由とは?
つまり藤本コーチの判断は高代氏が著書で書いている根拠のある判断ではなく、いちかばちかの送球の乱れに期待するギャンブルだったのだ。
6月18日の日ハム戦では、原口のファウルフライで三塁走者の森下にタッチアップを自重させるなど5つの走塁ミスが重なり、岡田監督から叱責を受けた。そのプレッシャーがあったのかもしれないが、藤本コーチは、冷静な判断に欠いたと厳しく批判されても仕方がない。
藤本コーチは、岡田監督が数年前に次期監督候補に挙がっている頃から「将来コーチにしたい」と考えていた人物。見込んでいるからこそ接し方も厳しくなる。結局、藤本コーチは和田監督の4年目の2015年から2軍コーチとして入閣。2019年からは矢野監督のもとで1軍の三塁コーチを務めている。高代氏は三塁コーチに必要なものは「経験」とも付け加えていた。すでに6年目だが、ギリギリの判断を求められる修羅場の数は足りていないのかもしれない。
守りでもベンチのドタバタで勝ちパターンの歯車が狂った。
8回だった。好投した先発の西勇輝、7回を締めた石井からバトンを受けた3番手の桐敷が、二死一、二塁から“不動の4番”村上にセンター前タイムリーを許して5-2の3点差となった。なお一、二塁でサンタナを迎えたところで岡田監督は防御率1.16の漆原にスイッチした。だが、岡田監督が投入したかったのはゲラだったという。
しかしブルペンでゲラは肩を作っていなかった。準備していたのは漆原と前日に2イニングを投げていた島本の2人だけだった。漆原はサンタナに四球を与え、二死満塁となって長岡に右中間に走者一掃の同点タイムリー二塁打を打たれた。続く松本にも左前打を許し、二死一、三塁で、4点差であれば出番のなかった岩崎を急きょ投入したが、流れを止めることができない。代打の山田に勝ち越しのタイムリーをレフトに引っ張られた。岡田監督は、「うまいこといかん場合もあるわけやんか。それが準備」と嘆いたという。
阪神の継投の準備は、安藤投手コーチが、あらゆるケースを想定して立案し、岡田監督に伝え、時には指揮官が「それちゃうやろ」と差し替えを命じながら、ブルペンの久保田コーチと連携を取って準備を進める。そのルーティンが昨年の優勝時は守られ、うまく回っていた。4点差の安心感から細心の確認作業を怠ってしまったのか。