「井岡一翔に勝てる確信がある」7.7両国統一戦を前に豪語のIBF王者マルティネスにマイク・タイソンが“あの”極意を伝授
だが、14歳からタッグを組んでいる曲者のロドリゴ・カラブレッセ・トレーナーは、「我々を騙すためにそう言っているのかもしれない。本当かどうかもそれができるかどうかもわからない。ただ我々にはどんなスタイルで来ても対応できるキャパシティがある」と用心深い。
井岡のディフェンス能力の高さについても「完璧なディフェンスなんかない」と、その突破に自信ありげだった。
ただ英の大手ブックメーカー「ウィリアムヒル」のオッズを見ると井岡の勝利が1.66倍、マルティネスの勝利が2.2倍、ドローが15倍となっていて、僅差ながら井岡が有利と予想されている。
6月29日に米国でWBC世界同級王者のファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)を7回に鮮烈のボディショットで倒したジェシー“バム”ロドリゲス(米国)は、「井岡とマルティネス戦の勝者と戦いたい」と熱望し「井岡が勝つと思う」と予想した。
それを伝えるとマルティネスは猛反発した。
「ボクシングには運がある。私は日本に勝つために来た。勝つ確信がある。私は、あの試合はエストラーダが勝つと思っていたが、負けたじゃないか。ボクシングでは常に予想を覆すことが起きるんだ」
そしてマルティネスには大きな野望がある。
「最終的には4つのベルトを統一したい。まずは1本、1本だ」
井岡戦に勝った場合、次戦の対戦候補として、エールを送られたWBC王者のバムとWBO王者の田中を天秤にかけた。
「ファイトマネーのいい方と戦う。IBFの意向もあるだろう。ただ日本が気にいっているので、日本に帰ってきたい」
バムがエストラーダとの再戦条項を結んでいるという事情を知っているのか、田中との戦いに気持ちが傾いていることを明かす。その田中は7月20日に両国で同級12位のジョナタン・ロドリゲス(メキシコ)初防衛戦を行う。指名試合がかからなければ、両者が勝利した場合、対戦のタイミングとしてもピッタリとくる。
そしてマルティネスには勝たねばならないモチベーションもある。
マルティネスは12人兄弟の7番目。叔父には14人の子供がいて、他の親戚には、16人家族もあって、ボカ地区でも有名な大家族だそうだが、幼い頃は長屋暮らしで、「父のおかげで食うものには困らなかった。ナイキのシューズは買えなかった」という。
地域のアマチュア王者になったこともある2人目の妻ミカエラ・オリビリ・トルタさんとの間に11歳と9歳の娘がいる。両親と、その娘の名前をタトゥーとして両腕と左胸に彫り込むほど家族思いのマルティネスは「私には夢がある。母に家をプレゼントしたい。今回のファイトマネーでおそらくその夢を果たせるかも」と泣けるような話を口にした。
地球の裏側からきたハングリーなIBF王者は、その夢物語の第一歩を日本のリングからスタートすることができるのだろうか。