なぜ浅野拓磨のドイツ・ボーフムからスペイン・マジョルカへの“サプライズ”移籍が実現したのか…「最前線に火薬を」「新たなる久保建英」とスペイン紙は評価
根拠は日本だけでなく、世界中を驚かせた“あの一発”だった。
2022年11月23日に行われた、ドイツ代表とのカタールW杯グループステージ初戦。後半12分から1トップで途中出場していた浅野は、1-1で迎えた同38分に後方からのロングボールに抜け出し、日本を勝利に導く豪快な勝ち越しゴールを決めている。
「相手からどのように思われていたのかは、実際にはわからないんですけど…」
浅野は苦笑とともにこんな断りを入れながら、カタールW杯を境に、ドイツ国内で自身に向けられる視線が変わった気がすると打ち明けている。
「世界中が見ているW杯という大会でゴールを決められた、というのはあるかもしれない。個人的にはどの試合でも、自分が1対1負けている、という感覚はなかった。シンプルな部分で成長している、という手応えはずっとあったので、それも自信となって相手にも伝わっているのかな、というのは感じていました」
具体的な理由は何ひとつない。対戦相手に実際に確認しているわけでもない。それでも、究極のプラス思考というべきか。あるいは異次元の自己暗示のなせる業なのか。すべてをポジティブに考える浅野は「自分でも『もっている』という感覚はありますね」と、さらにこんな言葉を続けていた。
「確かにヒーローになれるタイミングというのはちょこちょこあるというか、もしかすると他の人よりも多いかもしれないけど、そのなかで僕自身はさらに大事なものを求めてきた。具体的には常に結果を残せる選手になりたいので、その意味ではまだまだ成長しなければいけない、という思いの方がはるかに強い」
マジョルカも2022-23シーズンこそラ・リーガ1部の9位に食い込んだものの、昨シーズンは15位と苦戦している。久保が最初にプレーした2019-20シーズンは、最終的には19位に終わって2部への降格も味わっている。
リーグにおけるクラブの立ち位置を考えれば、ステップアップとは言い難いかもしれない。それでもブンデスリーガとはサッカーや文化、風習がまったく異なるラ・リーガへ挑み、ヒーローになる頻度をアップさせれば、イコール、浅野が目指す成長になる。
浅野のマジョルカ加入とともに、記憶に残るゴールの象徴として、SNS上にはドイツ戦を打ちかましたゴールを決めるまでの動画が早くも投稿されている。スペインのスポーツ紙『MARCA』は、こんな言葉とともに浅野の加入効果に期待を寄せた。
「浅野琢磨よ、マジョルカの最前線に火薬を」
大久保嘉人をかわきりに家長昭博、久保に続くマジョルカ4人目の日本人選手は、6日に早くも新天地に入った。新シーズンの開幕戦は現地時間8月18日。ホームのエスタディ・マジョルカ・ソン・モイシュに迎えるのは王者レアル・マドリード。注目されるほど勝負強さを発揮する男に、またとない大舞台が用意されている。