なぜサッカーパリ五輪代表FWの平河悠は移籍先に英2部のクラブを選択したのか?
高校サッカーの強豪、青森山田から異例の転身を遂げた黒田剛監督(54)も、プロの舞台で初めて采配をふるった昨シーズンの戦いで、正式に加入したルーキーを重用した。35試合に出場して6ゴールをマークし、J2制覇と初めてのJ1昇格に大きく貢献した平河を、指揮官は今シーズン序盤の段階で称賛している。
「いまや攻守両面で欠かせない選手になった。攻撃力を特徴とする選手がたくさんいるなかで、平河は守備でもしっかり仕事ができる。非常に頼もしい存在です」
同時に早ければ今夏の移籍市場で海外から狙われるのでは、と指摘される存在にもなった。実際に群を抜くスピードと切れ味鋭いドリブルで、町田の快進撃をけん引した平河はチャンスを手繰り寄せ、熟慮した末に海をわたった。同時に素朴な疑問も頭をもたげてくる。新天地として選んだリーグが、なぜ「2部」だったのか、と。
ひとつは年齢が考えられる。
パリ五輪世代の平河は、来年1月には24歳になる。サッカー界、特にヨーロッパでは若手とは見なされない年齢だと理解しているからこそ、平河も町田を通じて発表したコメントのなかで「短いサッカー人生――」と言及した。
さらに平河自身は年齢制限のないA代表入りと、W杯の舞台に立つ自身の姿を「自分の最終的な目標」と位置づける。そのためにも、一刻も早く海外でプレーしてさらに飛躍したい。今後はいつチャンスが巡ってくるかわからないからこそ、自らの実力で手繰り寄せたブリストル・シティからのオファーを最終的に選択した。
もうひとつはリーグのレベルが考えられる。
イングランド2部に相当するものの、チャンピオンシップは5大リーグに次ぐヨーロッパのセカンドグループに、他国の2部リーグでは唯一位置づけられている。ポルトガルやオランダと並び、ベルギーよりも上にランクされるチャンピオンシップは、テクニックやスピードだけでなく、デュエルの局面で激しい肉弾戦も求められる。
2022-23シーズンから2年間、チャンピオンシップのハダースフィールドに所属し、日本代表にも名を連ねたDF中山雄太は、それまで所属していたオランダのズヴォレと比較しながら、ハダースフィールドの地元メディアにこう語ったことがある。
「オランダとはまったくフットボールが違う。チャンピオンシップはより強いフィジカルと、攻守両面でペースの速いフットボールが求められる」