なぜサッカーパリ五輪代表FWの平河悠は移籍先に英2部のクラブを選択したのか？

　チャンピオンシップは24チームで構成され、ブリストル・シティは2023-24シーズンを11位で終えている。このオフに左サイドアタッカーが抜けたなかで、クラブ史上で46年ぶり、プレミアリーグ発足後では初めてとなる1部昇格を目指す新シーズンの戦力として、同じポジションを主戦場とする平河に白羽の矢を立てた。
　攻守両面でレベルアップが求められるリーグのレベル。そしてブリストル・シティ側がJ1でのパフォーマンスをしっかりと分析した上で、オファーを出した状況が平河の背中を押した。同時にパリ五輪出場が認められた点も大きい。イギリスの公共放送『BBC』は、平河の加入とともに、シーズン開幕へ向けた動きをこう伝えている。
「平河はパリオリンピックに日本代表として出場する前に、新シーズン開幕へ向けたトレーニングとして、ポルトガルでトレーニング中のチームに合流する予定だ」
　パリ五輪の男子サッカー競技では、一度登録された選手は怪我や病気、コンディション不良でない限りは入れ替えられない。平河がパリ五輪代表に選出された場合をみすえ、新シーズンへ向けた準備期間でブリストル・シティを離脱する件で、町田がクラブ間交渉でブリストル・シティ側から確約を取りつけた跡が伝わってくる。
　準備期間だけではない。チャンピオンシップの新シーズンは8月第2週に開幕し、ブリストル・シティは現地時間10日に敵地でハル・シティと対戦する。一方でパリ五輪の決勝は同9日。もし日本が進出した場合、当然ながら平河は開幕戦には出場できない。
　開幕戦欠場を容認してでも、パリ五輪へ向けて状況を整えてくれた新天地ブリストル・シティの熱意。そして、古巣となった町田にかかわるすべての人々から海を越えて届くエール。さまざまな思いを力に変えながら、無名の存在から五輪代表、そして海外移籍へと昇華させてきたシンデレラストーリーの新章を、平河が力強く紡ぎ始めた。