「起こるべくして起きた阪神のミラクル」2試合連続9回二死からの逆転サヨナラ劇の裏にあった“怒涛”4人連続代打の岡田采配とヤクルトが犯した致命的ミス
阪神が9日、甲子園で行われたヤクルト戦で9回に2-1で逆転サヨナラ勝利した。1点を追う阪神は9回に怒涛の4人連続の代打攻勢を仕掛けて二死満塁から近本光司(29)がライト前に逆転の2点サヨナラタイムリーを放った。9回二死からの2試合連続の逆転サヨナラ勝利は球団史上初の快挙。阪神は3連勝で貯金を3に増やして3位をキープ。首位に浮上した巨人とは1ゲーム差だ。
坂本の三塁へのゴロをヤクルトの北村拓が痛恨失策
甲子園を重々しい空気が覆っていた。エースの才木が調子が悪いなりに7回を1失点に抑える力投を見せた。8回を桐敷、9回を石井がゼロに封じ込んだが、スコアは0-1のまま9回裏を迎えた。ヤクルトは左腕ストッパーの田口を繰り出し、阪神の攻撃は5番の佐藤からだった。岡田監督は「佐藤は田口に相性がいい。1本出るかと思って」いたそうだが、レフトフライに倒れた。だが、まだ何も終わっていなかった。
一死から岡田監督が怒涛の4者連続の代打攻勢に出る。
まずは島田に代えて野口。育成から支配下となって1年目の野口がボールを見極めて四球で歩いた。2人目の渡邉はライトフライに倒れたが、七夕のゲームでヒーローとなった3人目の原口が三遊間を破るヒットでつないだ。
「野口からうまくフォアボールを選んだ。原口も、前日(7日)にいい仕事してる。よかったですね」とは、試合後の岡田監督。
投手の石井のところで代打坂本。豊田もいたが、岡田監督は、延長戦を想定して「2人(豊田、熊谷)は残しておきたい」という考えから坂本という伏兵カードを切った。
坂本の力のない打球は、ちょうどサードのベース上に向かって弾んでいった。万事休す。次の瞬間、岡田監督は「ベース踏んだら、終わりのとこ。でもボールを弾いたのが見えた」という。
8回から村上に代わって三塁の守備に入っていた前巨人の北村拓がベースを気にしたのか、なんとこの打球を弾き、三塁ベースを踏んでゲームセットどころか、一塁へも送球することができずにオールセーフとなったのだ。運命のいたずらのようなエラーを誘い、満塁で近本である。
近本は「うわー。回ってきた」と思ったという。
コントロールに苦しみ、ボールにキレもなかった田口が、ワンボールから投じた2球目のスライダーが甘く浮いた。近本は、それを振り抜いたが、ボールをため過ぎたために打球は詰まった。それが幸いした。しかも、二死満塁でヤクルトのライトの丸山は、それほど前進守備を敷いていなかった。怒涛の代打攻勢で、延長想定の守備要員を残しておかねばならない関係でサヨナラの走者となる原口に代走を出せなかった。その原口の足と近本の長打を頭に入れて、ヤクルトは、そのポジショニングを取ったのか。
「ライトがあまり前進じゃなかったんで。頼む、頼む、落ちろ!と」
近本の願いが通じたかのように打球がライト前へポトリと落ちた。そして原口が頭から決死のホームイン。丸山のバックホームも大きくそれた。近本は「サヨナラ確信というか。『フミさん頼む』と思っていた。必死のパッチで走ってくれた」と原口の走塁に感謝。岡田監督は原口の打球判断を称えた。