なぜ岡田監督は育成出身の野口恭佑をスタメン抜擢して4連勝の立役者となったのか…はまってきた岡田野球と最下位ヤクルトの失態
阪神が10日、甲子園で行われたヤクルト戦に4-1で快勝。4連勝で貯金を4に増やして2位に浮上、首位の巨人に0.5差と迫った。岡田彰布監督(66)がプロ初スタメンに抜擢した育成出身の野口恭佑(23)が同点、ダメ押しの2打点をマークする活躍を見せた。なぜ岡田監督は野口を抜擢したのか。そして6連敗のヤクルトが犯した失態とは…。
三振したスライダーに2打席目はバット止まる
お立ち台に大竹と共に指名された野口は初々しかった。
「(スタメンでも)やることは変わらないので、一生懸命やることを考えていたので一生懸命やりました」
「6番・右翼」でプロ初スタメンの抜擢を受けた。
まずは4回だ。一死から大山が死球で出塁すると佐藤はセカンドゴロ。併殺に終わりそうな正面のゴロだったが、北村拓が二塁へ転送しようとする際にボールが一瞬手につかなかった。仕方なく一塁へ送り、チェンジの場面が一転、二死二塁と変わった。
野口は「前の打席で抑えられていたので、次は何とかしようと思って打席に入りました」と言う。
2回無死二塁で岡田監督は野口に「打て!」のサイン。だが、追い込まれた後に奥川が投じた外角低めのおそらく見送ればボールのスライダーに手を出して三振に倒れていた。
カウント1-2からの5球目。同じような外角低めのスライダーにバットが出かけたがなんとか止めた。そして6球目の148キロのストレートをつまりながらも持ち前のパワーで振り抜いた。打球はセンター右へ。記念すべきプロ初タイムリーが貴重な同点打となった。
岡田監督は、野口の対応力を称えた。
「前の打席で三振しているので、それの教訓。うまく右の方に打ったよね」
5回にヤクルトのバッテリーエラーで勝ち越し、2-1で迎えた6回にも一死一、三塁で野口に打席が回ってきた。3番手の石山が内角に投じた147キロのストレートをしっかりと上から叩き、高いバウンドとなった打球で、大山は生還。岡田監督のリクエストは実らなかったが、長岡の二塁封殺を狙った送球もギリギリで、野口は貴重な3点目をスコアボードに刻んだ。低迷している阪神打線の共通項はストレートに差し込まれることだった。だが、野口は、内角球に差し込まれることなく前でさばきボールにスピンをかけた。岡田監督は、ショートゴロ併殺に終わらせなかった野口の打撃スキルを評価した。
6回1失点で6勝目をあげた大竹も野口について「先発投手は、残留練習で鳴尾浜に行くことが多いんですけど、そこで野口の育成時代から見てまして『なんで(こんな選手が)2軍にいるんだ』と思っていました。もっともっと活躍できる選手だと思いますし、まだまだこれから頑張ってくれると思います」と語っていた。
さらに坂本の右中間への二塁打の飛び出し4-1とリードを広げ、岡田監督をして「久しぶりに7、8、9回とゆっくりベンチで見れた」といわしめた。
右腕の奥川に対して、ライトのスタメンは、左打者で好調の島田でいくと予想されていたが、岡田監督は野口を起用した。なぜなのか。
「(スタメンを決めたのは)昨日から。奥川は同じような年」
星稜高から2019年にドラフト1位でヤクルトに入団した奥川は2001年4月生まれの23歳。野口は創成館高から九州産業大を経て2022年の育成ドラフト1位で2000年7月生まれ。まだ誕生日来ていないため23歳で、2人は学年でひとつ違いの同世代。昨秋キャンプで支配下登録されたばかりの“雑草”の育成ドラ1が、阪神も入札するなど3球団が競合した超エリートのドラ1に抱く「お前には負けない」というライバル心のような心理を岡田監督は利用したのである。
そしてストレートに差し込まれない野口の打撃スタイル。
データにはない岡田野球の世界観と言っていい。こういう野球がはまり始めれば優勝した昨年同様に阪神は強い。