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パリ五輪のボクシング競技で日本代表が着用するユニホームは赤外線盗撮を防ぐ画期的なものだが、女子は1人も出場せず
パリ五輪のボクシング競技で日本代表が着用するユニホームは赤外線盗撮を防ぐ画期的なものだが、女子は1人も出場せず

赤外線盗撮防止新素材の画期的ユニホームを開発もパリ五輪ボクシング女子代表が1人もいない“トホホ”…ただ女子バレー代表は同素材ユニホームを着用

 パリ五輪に出場するボクシング日本代表の公開練習で日本ボクシング連盟のオフィシャルサプライヤーであるミズノ株式会社から大会の公式ウェア(競技用ユニホーム)が披露された。特徴のひとつが赤外線盗撮を防ぐ画期的な素材が使用されていることだが、今回、女子は五輪の出場権を得ることができなかった。数年前からプロジェクトを組んで開発された新素材だったが、なんともトホホな発表となってしまった。ただ女子バレー代表のユニホームにも同素材が採用されており、選手が競技に集中できるように開発したミズノの努力は無駄にはならないようだ。

 アスリートを悩ます性的ハラスメント

 近年女子アスリートを悩ませているのが性的な目的で撮影される悪質な盗撮問題だ。赤外線カメラを使った透けた画像などスマートフォンの普及によっても盗撮行為がエスカレート。性的画像がSNSで拡散される被害やアスリートに卑猥なメッセージを送るなど性的ハラスメントの問題が深刻化している。さらにそれらの盗撮画像や動画が売買の対象になっているので始末に負えない。
 またAIを使ったフェイク画像や映像が拡散するなど、女子アスリートを取り巻く環境は悪化している。
 盗撮が気になり競技に集中できず、パフォーマンスが低下したり、あるいは、悪質な拡散でトレーニングにさえ影響が出るケースも少なくない。2020年に陸上競技の女子トップ選手が、悪質な被害を陸連に相談したことで、この問題が表面化。IOC、JOCも防止に乗り出し、東京五輪では「禁止行為」として「性的ハラスメント目的の疑いがある選手の写真や映像の撮影」がルール化された。
 東京五輪では、女子の体操競技でドイツが性的盗撮被害のターゲットにされやすいビキニカットの「レオタード」ではなく足首まで覆った「ユニタード」を着用して話題となった。
 その中でミズノが赤外線盗撮を防ぐため、赤外線をほぼ通さない画期的な素材を独自に開発、パリ五輪のボクシング代表のユニホームに採用した。
「近赤外線領域の吸収性に非常に優れた特殊な繊維をテキスタイル(織物)に応用した」というもの。特殊な繊維が吸収した赤外線(熱)を水分の気化に利用することで、生地の蒸散性が促進され、その特殊繊維が人体側からの赤外線を吸収することで、赤外線カメラに対する防透け性を向上させて、赤外線盗撮をシャットアウト。赤外線だけでなく通常の光の状態でも、透けて見えない素材だという。
 だが、残念なことに、その特殊素材を使ったユニホームを着用して戦う肝心のボクシングの女子代表が1人もいないという、なんとも“トホホ”な結果を招いた。
 担当者は「このプロジェクトは数年前から進んでおり、東京五輪で2つのメダルを獲得した女子勢が、まさか一人も出場権を得られないとは予想もできませんでした」と苦笑いを浮かべた。
 東京五輪では、フェザー級で入江聖奈(当時日体大)が女子では日本人初となる金メダルを獲得。フライ級でも並木月海(自衛隊)が銅メダルを獲得した。だが、入江は五輪後、翌年の全日本選手権を最後に引退、並木は、パリ五輪世界予選へ出場選手を決める代表選考会を兼ねた全日本選手権を辞退。女子の強化に力を入れていた前連盟会長の内田貞信氏は、「ネクスト入江がたくさんいます。次の五輪でもメダルを獲れますよ」との期待を口にしていた。

 “ポスト入江”として期待された女子50キロ級の木下鈴花(クリエイティブサポート)、60キロ級の田口綾華(自衛隊)、66キロ級の鬼頭茉衣(カネヨシ)らが、五輪一次予選、最終予選に挑んだが、誰も出場権を得ることはできなかった。
 連盟関係者によると、バンコクでの最終予選の3回戦でブルガリアの選手に1-4で敗れた木下に関しては「微妙な判定で内容的には負けていなかった」という。

 

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