なぜ21歳の松木玖生はパリ五輪をあきらめてまでサウサンプトン移籍を決断したのか…来季はトルコのギョズテペにレンタル…長友は「確実にやれる。10年は欧州で」とエール
夏の移籍期間を迎えて待望のオファーも届いた。その一方で、代償を伴うリスクも高まっていた。パリ五輪に出場するU-23日本代表に選出されるためには、選手がそれぞれ所属するクラブから承諾を得る必要がある。今夏に移籍する可能性がある選手は、前所属チームだけでなく新天地の意向や方針も確認しなければいけない。
松木はU-23代表の主力を担ってきた。日本がパリ五輪切符を獲得した、今春のAFC・U-23アジアカップでは6試合すべてで出場。U-23中国代表とのグループステージ初戦では、先制点を鮮やかなボレーで決めてチームを勝利に導いている。
しかし、今月3日に発表された18人のパリ五輪代表メンバーに、松木の名前は見当たらなかった。理由を問われた大岩剛監督(52)は「彼の体やコンディションに問題があるわけではない」と答えるにとどめたが、会見に同席した日本サッカー協会の山本昌邦ナショナルチームダイレクター(66)は具体的に踏み込んで言及している。
「移籍の可能性があります。そのなかでパリ五輪の期間中に、われわれが確実に招集できる、という確約がえられませんでした」
FC町田ゼルビアの所属選手としてパリ五輪代表に名を連ねたFW平河悠(23)は9日、イングランドの2部リーグにあたるEFLチャンピオンシップのブリストル・シティへの期限付き移籍が発表されている。これは町田とブリストル・シティの間で、代表発表前の段階で平河のパリ五輪出場が容認されていたからにほかならない。
対照的に松木の場合は、FC東京とサウサンプトン、ギョズテペとの間で、代表選手を日本オリンピック委員会へ登録する期日までにコンセンサスが得られなかったのだろう。海外移籍を優先させた結果として、パリ五輪に出られなくなるのは覚悟のうえだったのか。こう問われた松木は「はい、もちろん」と即答したうえでこう続けた。
「若い選手たちが海外へ移籍するケースが年々増えているなかで、自分の場合はもう若いとは見られない年齢にもなってきた。その意味でも、こういったチャンスをもらえたからには、これをしっかりつかんでいきたいと思っています」
青森山田からFC東京への加入を決めたもうひとつの理由に、DF長友佑都(37)の存在もあった。FC東京からヨーロッパの舞台へ挑んで約11年にわたってプレーし、日本代表でも選出され続けている鉄人へ、松木は憧憬の視線を送り続けてきた。
「長友選手は海外のいろいろな国で挑戦していて、海外向けのメンタリティーもそうですし、ピッチ外のところでもすごく努力されている選手だと思うので」
こう語っていた松木は、早くも長友から情報を入手しているようだ。