なぜ菅原由勢の移籍金12億3000万円でのサウサンプトン移籍が実現したのか…「右サイトバックの最重要ターゲットだった」
当時16歳だった久保は、帰国直後にFC東京とプロ契約を結んだ。W杯前と同じ状況でいる限りは、とてもじゃないがイングランドに追いつけないと痛感したからであり、実際に「この仲閒たちと5年後、10年後に日本代表を背負って、一人でも多く一緒のピッチで戦いたい」という言葉を残している。
久保に触発された一人が、当時17歳の菅原だった。
2018シーズンは名古屋グランパスU-18所属の2種登録選手として、2月の開幕戦でいきなりJ1デビュー。高校3年生に進級した直後の同4月にはプロ契約を結び、久保がレアル・マドリードへ電撃移籍した4日後の2019年6月18日には、菅原も背中を追うようにAZへ期限付き移籍し、翌年には完全移籍に切り替えた。
AZで濃密な経験を積みながら、菅原は「試合に出れば出るほど成長できる、と僕は考えている。もちろん、成長できるかどうかの可能性は自分次第でもある」と語ってきた。たとえば2022-23シーズンは、代表を含めて実に51試合に出場。さらに自信を深めたなかで、ステップアップの段階にきたと自らを評価していた。
あれから1年あまり。ステップアップを実現させた菅原は、すでに久保がスペインで結果を残しているヨーロッパの5大リーグのなかでも、最高峰に位置づけられるプレミアリーグへ挑む。そして、セインツの愛称で親しまれるサウサンプトンと契約した初日で、菅原は早くもファン・サポーターの心をつかんでいる。
クラブの公式ツイッターにポストされた動画。サウサンプトンを選んだ理由を問われた菅原は流暢な英語を駆使しながら、特徴的なあごひげをたくわえたマーティン監督が「男前だからだ」と語ってインタビューを笑わせ、さらにこう続けている。
「サッカーのキャリアを終えたら、僕もあごひげを生やして、彼のようになりたいと思っている。それはともかく、彼は僕に対して本当に親切で、サウサンプトンでのサッカーや生活にとてもいい印象を抱いた。一緒に仕事をするのがいまから待ちきれない」
初対面の相手でも積極的に打ち解け合うなど、明るく、ひょうきんな菅原の性格は、森保ジャパンに続いてサウサンプトンでもコミュニケーション能力と化している。笑顔を絶やさず、さらにユーモアをまじえた菅原の応対に、Xのフォロワーからは好意的なコメントが寄せられている。その代表的なものは次のようになる。
「私はすでに彼を愛している」
「彼は素晴らしい英語を話すよね」
「この時点で、プレミアリーグで最高の日本人選手だ」
サウサンプトンで7年半にわたってプレーし、いまもファン・サポーターから愛される存在のDF吉田麻也(35、現LAギャラクシー)と同じく、下部組織から名古屋でプレーしてきた菅原のキャリアも共感を呼んでいる。吉田に加えて、かつて在籍したMF南野拓実(29、モナコ)からも、菅原はさまざまな情報を入手したという。
昨シーズンはDF冨安健洋(25、アーセナル)やMF三笘薫(27、ブライトン)、MF遠藤航(31、リバプール)の日本代表勢プレーしたプレミアリーグに、さらにMF鎌田大地(27、クリスタル・パレス)、そして菅原も加わった。注目される新シーズンの開幕は8月第3週。菅原の新たなチャレンジは現地時間17日に、敵地セント・ジェームズ・パークに乗り込むニューカッスル・ユナイテッド戦からスタートする。