なぜ井上尚弥は9.3有明V2戦の相手に海外でマッチメイク批判のあるドヘニーを選択したのか…WBA剥奪問題の解決で4団体王座の最長防衛記録を狙う?!
プロボクシングのスーパーバンタム級の4団体統一王者、井上尚弥(31、大橋)が9月3日に東京の有明アリーナで、元IBF世界同級王者のテレンス・ジョン・ドヘニー(37、アイルランド)と2度目も防衛戦を行うことが16日、東京六本木のグランドハイアット東京で発表された。26勝20KO4敗の戦績を持つドヘニーは、過去に日本人ボクサーを3人打ちのめしてきたハードパンチャーだが、一部の米メディアや関係者からは「リスクより安全な相手を選択した」などの批判の声が飛び交うマッチメイクとなった。なぜ井上はドヘニー戦を選択したのか?
触れさせず完封する
グランドハイアット東京のだだ広いグランドボールルームに集まったメディアは100人を超えていた。4本のベルトを壇上に掲げ、ブラックでまとめたシックな出で立ちで登場した井上は、落ち着いた表情でドヘニー戦についての思いを口にした。
「ここ最近いい試合をしているので気の抜けない相手だと率直に思う。僕がスパーをよくする中嶋とラミドがKOで倒されているので実力はある。試合、本番を通じて実力を発揮する選手。東京ドームでの大きな舞台を終えたばかりで、この決定を(ファンや関係者が)どう思うかわからないが、気の抜けない戦い。しっかりとクリアして、この先もスーパーバンタムで見せる戦いをしていきたい」
当初は、WBO&IBF1位のサム・グッドマン(豪州)との指名試合が有力視されていた。だが、グッドマンが対戦オファーを拒否して7月10日の調整試合を優先したため、元世界王者のドヘニーにターゲットが変更された。
ドヘニーは、2018年に来日して岩佐亮佑からIBF世界同級王座を奪いとるなど、日本人キラーとして知られ、昨年6月に大橋ジム所属で現OPBF東洋太平洋同級王者の中嶋一輝を4回TKO、10月には井上のスパーリングパートナーを務めてきたジャフェスリー・ラミド(米国)を1回TKOで続けて撃破。5月6日の東京ドーム決戦では、井上の対戦相手のルイス・ネリ(メキシコ)が体重超過した場合のリザーバーとして、第1試合に登場し、ブリル・バヨゴス(フィリピン)に4回TKO勝利している。
ずっと井上への挑戦を熱望。大橋会長のSNSに直接「戦わせて欲しい」とのメッセージを送ってきたこともある。
大橋会長は「日本で3連続で試合をしてネリのリザーブもやってくれた。上手さはグッドマンだが、ドヘニーの怖さはネリ以上。思い切りがあり、パンチをふってくる。ネリと同様、勝ちにくるスタイル。噛み合うが危険なシーンもある。消防の仕事もしていてフィジカルが強い」と、ドヘニーを選択した理由を明かした。
ドヘニーは当日体重がリミットから12キロ以上になったこともある体格、フィジカル、パワーが武器。それでも井上は「触れさせずの完封するのがテーマ」と豪語した。
「当日、どれだけ体重を増やそうが、フィジカル勝負をしてこようが、スピード勝負で触れさせなければ問題はない。ボクシングは体のでかさ、パワーだけじゃないというところを理解している。そういったところを考えて戦いたい。途中フィジカル勝負が必要になってくる場面もあると思うが、それすら必要のないくらい、完封したい」
そして、こうイメージを描く。
「リングに上がると自分のボクシングは必ず面白くなる。12ラウンド足を使って戦うことはない。逃げ回られると難しいが、ドヘニーは出てくるので面白くなる。一発もあり、体も自分よりもでかいので前半の緊張感はある」
一方、すでに米ボストンでキャンプに入っているというドヘニーは、こんなメッセージを送ってきた。
「私が昔を思い起こさせる真の戦士だとみんな分かっている。井上に対して素晴らしい試合をする。私は自身のパワーと強靭さを信じている。過去の他の選手のように逃げたりただ乗り切るようなことはしない。戦うために(日本へ)行く。そこでは最高の選手が勝つだろう」
ただドヘニーの37歳という年齢と、4戦前の昨年3月にグッドマンに判定で敗れるていることから一部の米メディアやファンからは批判的な意見が飛び交う事態が起きている。
米専門サイト「ボクシングニュース24」は「リスクより安全な相手を選択した」と報道。英トークスポーツは、WBAの指名挑戦者である元WBA&IBF世界同級王者のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)を抱えるマッチルームのエディ・ハーン代表が数日前に発したコメントを紹介した。
「恐ろしいミスマッチだ。日本のボクシング界にとって残念な結果だ。彼らはムロジョン・アフマダリエフから逃げている」