世界戦中止でファイトマネーはどうなる?挑戦者の2.9キロ体重超過でWBO王者田中恒成陣営を激怒させた舞台裏で何が起きていたのか…日本では前例のない決断の理由とは?
当初1階級上のバンタム級とスーパーフライ級間の53キロくらいまで落とせたのであれば、当日の体重に制限をかけた上で世界戦を敢行するプランもあったが、2.9キロ3キロの体重超過は異常な数字。主催者の帝拳プロモーションは、両陣営の訴えと、健康管理の問題などを考慮した上で、ライブ配信するAmazonプライムビデオ側とも協議した上でWBO、JBCの了承を得て中止を決断した。
畑中会長に「怒りを通り越しているのでは?」と聞くと「そうですよ」と強い口調で返した。
「1週間前に来日して3キロもオーバーって我々には考えられない、意気消沈ですよ。7月20日と決まっている以上、体重を作るのがプロフェッショナル。もうボクシングは辞めた方がいい。階級を間違えていませんか」
田中も、6月に鼻に膿が溜まる急病に襲われて、41度を超える高熱が1週間も続き体調を崩した。王者側が「ウエイトの面も含めて作り直すのに一番苦労した」のに世界挑戦経験もある挑戦者が体重超過を犯すとは思いもしなかっただろう。
畑中会長は電話で田中に中止を伝えた。
その表情は伺い知れなかったそうだが「(猶予時間の3時まで)戦闘態勢でいます」と最後までリングに上がることをあきめらめられない様子だったという。
その後、田中は自身のSNSで「相手選手の体調や試合不成立になった戦いを行う事自体、本来良くない事。色々な事を踏まえて試合中止という判断です。明日はグローブではなくマイクを持ってリングで皆さんに顔を見せます。残念なお知らせ誠に申し訳ございません」と報告した。
当日、リング上で挨拶を行う予定だという。
一方のロドリゲス側のダミアン氏は「恥ずべき報告をしなければならないことを申し訳なく思う」と謝罪した。
ロドリゲスは12日に来日し、最終調整に入っていたが、17日の練習中に異変が発生した、全身に痙攣が走り息もできない状況になった。世界戦が中止になることを危惧して病院にはいかなかった。ダミアン氏は日本の酷暑の影響による熱中症については否定し「カリウムが足りなかったのでは」との見立てを話した。スポーツドリンクを1本飲み、多少体調は回復したが、体重も元に戻り、この時点で56キロだったという。18日には帝拳ジム内で暖房をかけて厚着をして動いたが、汗が出ず、サウナに入っても体重は落ちなかった。ダミアン氏も勇気づけるため、計量当日の朝も一緒に動いたが、状況に変化はなかった。計量前日から当日に一気に体重を落とす、いわゆる水抜き減量の失敗ではなかったようだが、調整ミスは明らかだった。