那須川天心に3回TKO負けした世界4位ロドリゲスは覚醒した“天才格闘家”をどう評価したか…「パンチの強さはなかなかのもの」
ボクシング転向4戦目の那須川天心(25、帝拳)が20日、両国国技館で、54.4キロの契約ウエイト10回戦で、WBA世界バンタム級4位のジョナサン・ロドリゲス(25、米国)と対戦し、2度のダウンを奪う圧倒的な内容で3回1分49秒TKO勝利した。恐るべき進化を見せた天心は、秋に予定されている次戦では地域タイトルに挑戦し、早ければ、来年後半にも世界戦に挑む可能性が高まってきた。
「KOできないって言ってたのは誰ですか?」
リング上で天心がドヤ顔で叫ぶ。
ボクシング転向わずか4戦目にしてついに天才格闘家が覚醒した。
元世界王者に1回KO勝利した実績もある世界バンタム級4位のロドリゲスにほぼ何もさせずに3ラウンドでキャンバスに沈めたのだ。
「みなさんおまたせました。倒すところを見たかったと思う。3戦目でTKOとなって今回倒しきれて少しは成長できたところを見せられた。被弾はしていない。すべて見えた。スタイルをやっと確立できてきた」
昨年4月の与那覇翼(真正)とのデビュー戦、9月のファン・フローレス(メキシコ)戦と続けて判定勝利。1月のルイス・ロブレス(メキシコ)戦はTKO勝利だったが、3ラウンド終了後の棄権で、倒して勝ったというわけではなかった。
「天心はパンチがない」「本当に強いの?」などと、SNSでネガティブな意見が飛び交っていた。だが、天心はその声を封じる見事な進化を3ラウンドの戦いで示したのである。
サウスポーの特徴を生かして遠い距離でボクシングをした。
「宇宙人が来ちゃった!みたいな本来のボクシングにはない動きを見せる」の公約通り、通常のダッキングとは違うリズムと角度で頭を動かし、一発一発のパンチに強弱をつける。そして素早いステップバックで、常にロドリゲスのパンチが届かない距離をキープしていた。
「もっと距離をつめたかったがステップバックが早く、一歩上回られた。彼の距離だった」とは、世界ランカーの試合後コメント。
2ラウンドには、左の強打を上下に散らしておいてから、ノーモーションの左ストレートが、もろに顔面を捉えて膝を折らせた。右手を上げてアピールした天心は一気にロープを背負わせて猛ラッシュをかけたが、惜しくもゴング。ただ天心は「ダウンを一回取って、まだあるぞ、思った。気を抜かず戦う準備をした」と“終わり”を感じとっていた。
フィニッシュは流れるような美しいコンビネーションブロー。
まず左ストレートを効かせ、相手がひるんで下がると、左ボディから左アッパーをかちあげ、右フックをスイングして、留めに左ストレート。ロドリゲスは腰から崩れ落ちた。カウント8で立ち上がったが、レフェリーは続行不能と判断してTKOを宣告した。
「感触というのがない。抜けるというか倒すというつもりで打っていない。今までは見るという感じだったが流れのなかで狙うことができた。ハイライトを見たら相手が吹っ飛んでいたのでパワーもついた」
KOアーチストが口を揃えて言うのがダウンシーンに「手応えがない」という感覚。力まず精度の高いパンチを打てた証拠だろう。
「倒すパンチは決めていなかった。何でもタイミングで当たれば倒れる練習をしてきた。だから一個、一個、相手の動きを見ながらパンチを打てた」