那須川天心に3回TKO負けした世界4位ロドリゲスは覚醒した“天才格闘家”をどう評価したか…「パンチの強さはなかなかのもの」
一方のロドリゲスは、グローブを大きく振ってストップへの不満をぶちまけた。だが、ほぼ同時に父であるチーフトレーナーがタオルを掲げて棄権の意思を表示していた。
「ストップに不満はあった。カウント8で立ち上がった。まだ続けられると思った。だが、父の最終判断は正しかったと思う」
そしてロドリゲスは天心をこう評価した。
「下馬評通りのスピードが持ち味だと思った。過去に対戦した選手と比べても、パンチの強さはなかなかのものだった。体重差は感じたが、前に出るし、足も止まらない。どんどん強くなるだろう」
それでも天心は「パワーがあるとは思わない。パワーへの過信はない。タイミングはパワーに勝るですよ」と謙虚だった。
元2階級制覇王者である粟生トレーナーは「連続性」を評価した。
「流れが切れなかった。相手に攻撃を与える隙を与えなかったのが良かった。トップになればなるほど(動きが)切れるタイミングを狙ってくる。(練習の)最後にバチっとはまったものが今日も出せた」
攻撃から攻撃への切り替えが素晴らしかった。打った後に、すぐに次のパンチを打てるポジションをキープしていた。だから連続攻撃が可能になったのだ。
粟生トレーナーに採点を求めると「合格点かな」。
横から天心が「具体的に?」と催促すると「90点」。それを聞くと「ウェーイ!」と声を出しておどけた。
壁にぶつかっていた。6か月、試合間隔が空いたため、短距離、中距離、長距離、インファイト、アウトボクシングと、あらゆるパターンを詰め込み過ぎたことで心身が“パンク”した。距離に迷い、「考えていることがなぜできないのか?」と悩んだ。
キックボクサーの特徴だが、打ち合いに弱く、ジムの元WBC世界スーパーライト級王者の浜田剛史代表や、元WBC世界バンタム級王者“ゴッドレフト”山中慎介氏のような一撃必殺のパンチ力もない。
その中で陣営と天心が、共同作業で完成させたのが、本人が「宇宙人」と評する天心スタイルだった。
「壁にぶち当たって逃げる人もいる。自力でチームとして上ってきたのが、一番の勝因。ボクサーだけどボクサーじゃない不思議な動きができた」
そう自負した。
完成した天心スタイルは、天性の格闘センスと連続性をエッセンスとして加えた究極のスピード&タイミングのボクシングと言っていい。
だが、天心は、そのくくり方に不満気だった。
「自分の動きを先にして相手を動かす。自分が試合を作り場を支配する。そういうボクシング。スピードとタイミングは元々狙っていたもの。そこに流れを切らないことを意識する。ジムのみんなで作り上げた(スタイル)」