なぜパリ五輪の初戦でなでしこジャパンはスペインに1-2逆転負けを喫したのか…「時間の経過と共に体力を失った」
昨夏の対戦時のFIFA女子ランキングは、なでしこの11位に対してスペインが6位。今年6月に更新された最新のそれでなでしこは7位に上昇しているが、最終的に女子W杯を初めて制したスペインは1位に君臨している。
ランキングがすべてではないものの、意外にも今回が初の五輪出場となるスペインに実力差を見せつけられた。そのなかで、なでしこも昨夏と比べて成長しているのか。鈴木氏は「今日の試合では、ちょっと見られなかった」と厳しく言及した。
「しいてあげれば藤野あおばとなる。個の力で打開できる選手は非常に貴重で、そういった選手がなかなか育たない日本で、藤野は可能性を十分に感じさせてくれる。チームのなかで何をするのかではなく、まずは個でどのように状況を打開していくのか。そうした意思がはっきりと見てとれた試合だった」
試合を動かしたのは藤野の右足だった。
前半13分。ゴール手前の右、距離にして約25メートルの位置で獲得した直接FKでキッカーを担う。右足から放たれた強烈な弾道は、4人が並んだ壁の右側を巻きながら、スペインゴール上の右隅を急襲。懸命にダイブした守護神カタ・コル(23、スペイン)の左手を弾き飛ばした。鈴木氏も驚きを込めて称賛する。
「あの距離と角度から右利きの選手が蹴るには、あまりいい位置とはいえなかった。左利きのキッカーがいれば、という場面で、右利きの藤野はゴール上の右隅を狙って完璧なコースに決めた。素晴らしすぎるといっていい一撃だった」
試合は前半22分に、昨シーズンの女子バロンドールに輝いたMFアイタナ・ボンマティ(26、バルセロナ)が同点ゴール。後半29分にはボンマティのアシストから、FWマリオナ・カルデンテイ(28、アーセナル)が勝ち越しゴールを決めた。
なでしこはシステムを前半の[4-4-2]から後半は[3-4-2-1]にスイッチ。熊谷をして「前半は相手のインサイドハーフに対してなかなか出ていけなかったので、自分たちの形を変えて出やすくした」と言わしめた、ボンマティを封じるシステム変更で対抗した。しかし、肝心なところでボンマティに自由に動き回られてしまった。