決勝ゴールを押し込んだ山本理仁(左)と最初にシュート放った佐藤恵允(写真:森田直樹/アフロスポーツ
決勝ゴールを押し込んだ山本理仁(左)と最初にシュート放った佐藤恵允(写真:森田直樹/アフロスポーツ

パリ五輪サッカーU-23代表がOA不在で決勝T進出を決めた理由

 パリ五輪男子サッカーのグループステージ第2戦が27日(日本時間28日)、ボルドーのスタッド・ドゥ・ボルドーで行われ、グループDのU-23日本代表が1-0でU-23マリ代表を撃破。U-23パラグアイ代表との初戦に続く連勝で、1試合を残してベスト8進出を決めた。後半37分にMF山本理仁(22、シントトロイデン)が泥臭く押し込んだ決勝ゴールを一丸となった守りで死守した。出場16カ国中で唯一、オーバーエイジ(OA)を招集していない日本は、OA不在の大会で初めて決勝トーナメント進出を決めた。

 参加全チームでOA不在は日本だけ

 オーバーエイジが1人もいない日本が快挙を達成した。
 五輪は1992年のバルセロナ大会から23歳以下の年齢制限が、1996年のアトランタ大会から年齢制限のない最大3人のOA枠がそれぞれ設けられている。しかし、今大会の日本は出場16カ国中で唯一、OAを1人も招集していない。
 アトランタ五輪から8大会連続で出場している日本が、OAゼロで戦ったのは同五輪と2008年の北京五輪の2度で、いずれもグループステージで敗退した。3度目のOA不在となったパリ五輪は初めてベスト8へ進出しただけでなく、現行制度になった五輪で初めて2大会連続でグループステージを突破した大会にもなった。
 歴史の扉を開いたヒーローの1人は、副キャプテンの山本だった。
 一進一退の攻防が続いていた後半37分。FW細谷真大(22、柏レイソル)が相手にユニフォームを引っ張られながら右サイドを力強く突破し、中央へグラウンダーのクロスを送る。しかし、走り込んできたMF三戸舜介(21、スパルタ・ロッテルダム)に合わず、逆サイドからFW佐藤恵允(23、ヴェルダー・ブレーメン)が放ったシュートも、横っ飛びで反応したマリのキーパーに防がれた。
 万事休すか、と思われた直後に長い距離を走り、こぼれ球に詰めたのが山本だった。相手2人に左右をはさまれ、体勢を崩しながら必死に左足を伸ばしてボールに触る。泥臭く押し込んだ一撃が、両チームともに無得点の均衡を崩した。
 OAが五輪チームに与える影響を、キャプテンを務めるMF藤田譲瑠チマ(22、シントトロイデン)とともに肌で感じたのが山本だった。
 4位に入賞した前回の東京五輪。東京ヴェルディの下部組織から育った山本と藤田は、ともに当時のU-23代表のトレーニングパートナーに選ばれた。そして五輪本番を直前に控えた段階で、OAで選出されたDF吉田麻也、DF酒井宏樹、MF遠藤航の3人が加わったチームの変化を目の当たりにしていた。
 今回も遠藤に加えて、DF板倉滉やDF町田浩樹ら森保ジャパンの選手たちがOAの候補にあがっていた。しかし、所属クラブとの交渉が難航し、大岩剛監督(52)は最終的にはOAなしのパリ五輪代表を選出した。
「その時その時で集まったメンバーが、U-23日本代表だとチームの発足当初から伝えてきた。なので、このメンバーが現時点の最高のメンバーです」
 指揮官の言葉に刺激を受けたのか。山本は開幕前にこんな言葉を残していた。
「いままで自分たちの世代だけで戦ってきた。それで(AFC・U-23)アジアカップでも優勝してきたので、しっかりと自信を持って戦えると思う」

 

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