パリ五輪サッカーU-23代表がOA不在で決勝T進出を決めた理由
ヴェルディから一度は別々の道を歩み始めた藤田と、ベルギーの地で再びチームメイトになって1年。ともにパリ五輪代表に選出され、キャプテンの藤田を支える山本が決めた2戦連続のゴールには、決意と覚悟が凝縮されていた。
OA候補に守備陣の名前が多くあがったのは、最終ラインを含めた守備に一抹の不安があったからだ。しかし、いざ始まってみれば南米王者パラグアイ、3月の国際親善試合で1-3と完敗したマリを相手に2戦連続の完封勝利を達成し、1試合を残してグループDの2位以内を確定させてベスト8進出を決めた。
最後尾で群を抜く存在感を放ち、堅守の中心を担ったのは守護神・小久保玲央ブライアン(23、シントトロイデン)だった。
前半終了間際には相手の意表を突くミドルシュートを右手で防ぎ、マリが攻勢に出た後半18分には至近距離から決定的な一撃を放たれたが、これも左手一本で弾き返した。そして、後半アディショナルタイムにハイライトが訪れた。
マリのシュートをブロックした際に、MF川﨑颯太(22、京都サンガF.C.)の左腕に当たったとしてVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が介入。主審によるOFR(オンフィールド・レビュー)をへて、判定がPKに変わった。
天国と地獄とを分け隔てる場面。FWシェイクナ・ドゥンビアがキッカーとしてスタンバイするなかで、小久保は心憎いほどに冷静だった。浜野征哉ゴールキーパーコーチから伝授されたドゥンビアの情報をもとに、それでいて情報だけに頼らずに、蹴る瞬間までの動きも見極めながら自身から見て右へダイブした。
ただでさえ身長193cm体重78kgの小久保の巨躯が、心理的なプレッシャーを与えていた状況で、蹴る刹那に狙っていた方向へダイブされた。ドゥンビアが募らせた焦りがコースを狂わせたのか。ボールはポストの左側を外れた。
会場をナントのスタッド・ドゥ・ラ・ボージョワールに移し、30日(日本時間31日)に行われるU-23イスラエル代表とのグループステージ最終戦は、ターンオーバーを含めて、ある程度余裕をもって戦える。
ただ、準々決勝の組み合わせはグループCとDの上位2位チームがたすき掛けで対戦する。そして、グループCではU-23スペイン代表が連勝で突破を決めた。準々決勝での対決を避けるためにも、グループDを1位で突破して臨みたい。
五輪に年齢制限がなく、フル代表が出場していた時期を含めれば、日本が2大会連続で決勝トーナメントに進出するのは1964年東京、1968年メキシコ両大会以来となる。後者で獲得した銅以来、実に56年ぶりとなるメダル獲りへ向けて、23歳以下だけの陣容で逆に結束力を高めた日本の視界が一気に良好になってきた。