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男子スケートボード(ストリート)で堀米雄斗が大逆転で連覇達成(写真・ロイター/アフロ)
男子スケートボード(ストリート)で堀米雄斗が大逆転で連覇達成(写真・ロイター/アフロ)

「ありえない形で金メダルを守った」堀米雄斗の大逆転の五輪連覇にスケボー“王国”の米メディアも興奮

 パリ五輪スケートボードの男子ストリート決勝が29日(日本時間30日)、コンコルド広場で行われ、東京五輪王者で世界ランキング3位の堀米雄斗(25、三井住友DSアセットマネジメント)が奇跡の大逆転劇で金メダルを獲得した。首位のジャガー・イートン(23、アメリカ)と96.98点差の7位で最後のトリックに臨んだ堀米は、起死回生の大技を成功させて全選手中で最高の97.08点をマーク。イートンをわずか0.1ポイント上回り、五輪連覇を達成した堀米を、米メディアは「ありえない形で金メダルを守った」と称賛した。

 ラストトリックで超難易度の高い大技に成功

 失敗した瞬間に五輪連覇の夢が絶たれる。たとえ成功させたとしても、100点満点中で最低でも96.99点と異次元のハイスコアを叩き出さなければ、首位のイートンを逆転できない。追いつめられた最後のトリックで、堀米が奇跡を起こした。
 まずは右足を前にしたグーフィー・スタンスで助走に入り、ターゲットにすえた一番大きいレールの目前で、右足のつま先でデッキの先端部分を弾いて体ごと跳びあがる。さらに宙を舞いながら、体を反時計回りに270度回転させる。
 乾坤一擲のトリックはこれで終わらない。デッキの後方部分をレールの上にかけて縁までスライドさせながら、さらに体を90度回して着地する。最初に270度回転している間は、堀米からはレールがほとんど見えない。稀有なバランス感覚と高度なテクニックが求められる超高難度の大技を、完璧に決めてみせた。
 堀米自身も確かな手応えを感じていたのだろう。着地に成功した直後に雄叫びをあげ、次の瞬間、両耳にはめていた白いイヤホンをもぎ取った。いつもは演技に集中するために音楽をかけるなど、自分の世界に浸るための必須アイテムとしていたイヤホンは、最後となる5本目のトリックに臨んでいる間はただの飾りとなっていた。
 表彰式後のフラッシュインタビューで、堀米はこう語っている。
「イヤホンはつけていましたけど音楽などはかけていませんでした。いままでやってきたこと、練習してきたことを思い出しながら、滑っているのは自分だけじゃないと言い聞かせて。サポートしてくれているみんな、家族や友だち、ファンの方々のすごい応援もあって、最後にうまく乗れたカギになったと思っています」
 宙を舞った後にレールにかける部分が、デッキの先端部分ではない点などで、SNS上で名称を公募したオリジナルの大技「ユウトルネード」とは少し異なる。それでもジャッジにアピールするには十分だった。得点が全選手中で最高の「97.08」だとわかると、堀米は誇らしげに両手をパリの青空へと突き上げた。
 土壇場で目の当たりにした大逆転劇が、最終的に4位になった世界ランキング2位の白井空良(22、ムラサキスポーツ)、銅メダルのナイジャ・ヒューストン(29、アメリカ)、そして銀メダルのイートンに計り知れないほど大きなプレッシャーを与える。
 そろって立て続けに最後のトリックに失敗し、堀米の五輪連覇が決まった決勝を、スケートボード王国の米『USA Today』は驚きと称賛を込めて伝えた。
「東京五輪の銅メダリスト、ジャガー・イートンは4本目のトリックで自己ベストとなる95.25点の大技を決め、悲願の金メダル獲得へ王手をかけたかに見えた。堀米は最終試技まで3本連続でトリックを失敗していたため、表彰台にあがるためにはとてつもないビッグスコアが必要だった。しかし、彼は最後のトリックで、ありえない形で東京五輪に続く金メダルを守った。ほぼ完璧な演技を介して彼が叩き出した97.08点は、あらゆるスケートボードの大会を通じて史上最高得点となったからだ」

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