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男子スケートボード(ストリート)で堀米雄斗が大逆転で連覇達成(写真・ロイター/アフロ)
男子スケートボード(ストリート)で堀米雄斗が大逆転で連覇達成(写真・ロイター/アフロ)

「ありえない形で金メダルを守った」堀米雄斗の大逆転の五輪連覇にスケボー“王国”の米メディアも興奮

 スケートボードのストリートは、45秒間で技を自由に演技するラン2本のうちの高い方の得点と、一発技を競うベストトリック5本のうち上位2本の合計得点で最終的な順位を決める。そして、ランを4位で通過した堀米はトリックの1本目で94.16点をマークしながら、2本目以降を3本連続で失敗していた。
 最後の5本目に臨む段階で、トリックをひとつしか成功させていなかった堀米は7位に後退。首位に立つイートンとは96.98点差にまで広がっていた。
 もっとも、堀米の脳裏には「あきらめ」の思いは浮かんでいなかった。
「ここまで来るのに本当にあきらめかけた時期もあったので。最後のオリンピック予選で優勝しないとパリにはいけなかったというか、優勝してもいけない可能性もあったし、本当に1パーセントくらいの可能性だったと思いますけど、その1パーセントを最後まで信じてきたし、このオリンピックでも最後に実った。すごくうれしいです」
 ハンガリーのブダペストで6月に開催された五輪予選シリーズ最終戦を、堀米は2位以内に入り、さらにパリ五輪代表をライバルの結果に委ねるという日本勢で5番手という状況で迎えた。しかし、大会中に膝を負傷するアクシデントにも見舞われながら、決勝のトリック3本目でパリ五輪と同じ大技を成功。逆転優勝とともにパリ行きを決めていた。
 東京五輪後に一時はどん底を味わわされた日々に比べれば、一発逆転の可能性を残していたパリ五輪決勝をつらいとは感じなかった。
 米『NBC』は、表情に焦燥感をみじんも浮かべず、頂点に立った堀米に脱帽している。
「男子スケートボードのストリート決勝は、稀に見るスリリングなフィナーレとなった。東京五輪の金メダリスト、堀米はもっとも重要で、なおかつ緊張する場面で、他のスケートボーダーたちが誰も挑戦しなかった高難度のトリックを完璧に決めた」
 米『Yahoo Sports』は、アメリカの取材陣の一員としてパリ入りし、スケートボード会場のコンコルド広場を訪れていた人気ラッパー、スヌープ・ドッグの名前を出しながら、記事のなかで次のように言及している。
「パリ五輪の有名人の一人となったスヌープ・ドッグが会場に駆けつけ、ナイジャ・ヒューストンたちに激励の言葉を贈った。コンコルド広場周辺のスピーカーからはスヌープ・ドッグらの曲が大音量で流れるなかで、堀米の最後のジャンプがアメリカのシナリオを土壇場でひっくり返した。せっかくのラップミュージックもアメリカのスケートボーダーたちにとって勝利の賛歌とはならなかった」
 米カリフォルニア州ロサンゼルスに住む堀米は、金メダリストの肩書きを背負った東京五輪後に、大きく遅れている日本のスケートボード、特にストリートを取り巻く現状を自分が中心になって変えたい、という壮大な目標を抱いていた。
 一時帰国してイベントに参加した2022年9月には、こんな言葉を残している。
「東京五輪の後から日本のスケートボード人口もすごく増えてきているので、このいい流れを止めないように、自分でもいろいろな活動やイベントを通じて、日本のストリートカルチャーへの理解をもっともっと深めていきたい。もちろん世界における自分のレベルも上げていかなきゃいけない」
 堀米は予選を通過した後に、決勝へ向けて「自分の限界を超えたい」という決意の言葉を残していた。有言実行で世界に衝撃と感動を与える形で達成した五輪連覇は、スケートボードへの関心や興味をさらに高め、堀米が描く目標を手繰り寄せる力にもなる。
 五輪予選シリーズ最終戦に続く逆転劇から、インタビュアーに「逆転の堀米ですね」と問いかけられた堀米は、照れくさそうにこんな言葉を返した。
「自分では逆転を狙ってはいないというか…本当はできれば早めに乗って優勝を決めたいんですけど、でも最後で逆転できたのは本当にうれしいですね」
 14歳の吉沢恋(ここ、ACT SB STORE)が制した女子とともに、五輪の正式種目になった東京大会に続いて男女でストリートの頂点に立った。スケートボード大国を拝命しそうな日本の中心を担う堀米は、2度目の五輪を終えた後は日本円で億単位の収入を誇るプロボーダーとして、愛してやまない競技の価値をさらに高めていく。

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