「限界まで追い詰められ仏国民の前で大恥をかくところだった」パリ五輪バスケで日本に金星献上寸前だった仏のメディアが“冷や汗”報道
先述の『Le Figaro』は自慢のスピードでコート上を駆け回り、得点力を含めてフランスに脅威を与え続けた河村を次のように描写している。
「誰よりも速く、自信にも満ちあふれていた河村は、レ・ブルーにとってコート上における悪魔であり続けた。オーバータイム(延長戦)に入り、一気に8点差をつけた状況で彼は再び3ポイントシュートを決めて、レ・ブルーを震えあがらせた。最終的には4点差で勝利するまでの時間が、どれだけ大変だったことか……」試合は最終クオーター序盤でターニングポイントを迎えかけた。
直前に連続3ポイントシュートを決め、70-72と追いあげる原動力になっていた八村が、2つ目のアンスポーツマンライクファウルを取られて退場となる。それまで24得点をマークし、守備でも渡邊、ホーキンソンとともにインサイドを固めていた大黒柱を欠いて、日本は残り8分31秒を戦わざるをえなくなった。
しかし、日本は誰ひとりとして下を向かなかった。
「自分が選んだ12人全員に、僕は絶対の自信をもっています。実際に代わりに入った渡辺飛勇が、すごくいい仕事をしたじゃないですか」
ホーバスHCが目を細めた、代わりに入った身長207cmの渡辺飛勇(25、信州ブレイブウォリアーズ)は、終了間際にNBAでプレーする216cmのルディ・ゴベア(32、ティンバーウルブス)のダンクをブロックしてスタンドをどよめかせた。
「試合が終わったわけじゃないし、自分たちでも必ず流れをもってこられると、全員で声をかけ合いながら戦っていました」
こう振り返った河村を中心に再び追い上げはじめた日本は、残り5分9秒で自らドライブした河村が決めて78-77とついに逆転。河村はその後も、アリーナにブーイングがとどろく状況で4本続けてフリースローを決める。残り16.4秒で84-80とした状況から、フランスの捨て身の反撃を食らってしまった。
迎えた延長戦で、勢いの差は明らかだった。体力も消耗させていた日本が力尽きた一戦を、仏メディアの『franceinfo』は昨シーズンのNBAの新人王、222cmのビクトル・ウェンバンヤマ(20、スパーズ)の名前を出しながら次のように伝えている。
「ウェンバンヤマに率いられるレ・ブルーが、奇跡的に日本を破った。初戦でブラジルを破ったフランスチームは苦しみ、河村に対抗するためにインサイドを固める戦いを強いられながらも、延長戦の末に日本の罠からかろうじて抜け出せた」
同国のスポーツ紙『L’EQUIPE』も、日本を称える言葉を忘れなかった。
「東京五輪の準優勝国であるレ・ブルーは、敗戦まであと一歩のところまで追いつめられた。最終的には辛勝したが、日本はフランスへ常に恐怖を与えていた」