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パリ五輪の日仏戦で河村(右)がストラゼルの3点シュートを止めにいった際のDFにファウルの笛が(ⒸFIBA)
パリ五輪の日仏戦で河村(右)がストラゼルの3点シュートを止めにいった際のDFにファウルの笛が(ⒸFIBA)

「私が審判なら笛は吹かない。ただし…」パリ五輪男子バスケで大金星を逃した河村勇輝への“疑惑のファウル判定”は本当に“誤審”だったのか?

 パリ五輪の男子バスケットボールの1次リーグの日本対フランス戦で起きた疑惑のファウル判定を巡る波紋が広がっている。問題の判定は4点リードの残り10秒で河村勇輝(23、横浜ビー・コルセアーズ)がスリーポイントシュートを防ぎにいった際に取られたシューティングファウル。映像では河村はまったく相手に触れていないようにも見えてSNS上で批判の声が殺到する事態となっている。女性審判の下した判定は本当に正しかったのか。専門家に意見を聞いてみた。

 

「“疑惑の笛”で日本が金星を盗まれた」
 海外のSNSではそんなポストもあった。
 問題のシーンは84-80で迎えた第4Qの残り10秒で起きた。フランスのマシュー・ストラゼル(22、モナコ)が左奥から体勢を崩しながらスリーポイントシュートを狙う。マンツーマンでディフェンスした河村が、左手を前に右手を大きく上へ伸ばすディフェンスの基本姿勢のまま、その前に立ちはだかる。そしてストラゼルがジャンプシュートを放ち、河村も同時にジャンプした瞬間、女性審判のブランカ・セシリア・バーンズ氏がファウルを宣告する笛を吹いた。
 河村が左手を接触してシュートを妨げたというシューティングファウルを取ったのだ。体勢を崩しながら放たれたストラゼルのスリーポイントシュートは成功。83―84と1点差に迫り、バスケットカウントで与えられたフリースローを難なく決め、「4点プレー」で土壇場で同点となり、延長戦に突入して、日本は90-94で敗れた。開催国で東京五輪銀メダルの格上フランスを倒すという歴史的勝利は幻に終わったのである。
 映像や写真を見る限り、河村の手はストラゼルに触れていない。欧州の専門サイト「バスケットニュース」によると、試合後、河村は「ファウルはなかった」と断言している。では、この疑惑の笛はやはり「世紀の大誤審」なのか。
 Bリーグの前身のbjリーグの元審判で、現在は地域のSB(実業団)リーグで審判を務めている人物に見解を聞く。
 元bjリーグ審判は「あの場面だけを切り取ると、もし私が審判であればファウルは取りません」と明言した。
「レフェリーは試合の流れを見ます。残り10秒のワンプレーですから、その笛が勝敗を分けることにもなりかねない状況でした。レフェリーは、当然、慎重になります。我々、レフェリーの世界でインパクトと呼ばれるファウルがあります。誰が見てもファウルだと認めるファウルです。インパクトであれば、当然笛を吹いたでしょう。ただ映像を見る限り、河村選手の左手は、ストラゼルに触れていません。女性審判として初めてNBAで笛を吹いたアメリカの審判の方は、ラインギリギリの場所にいてストラゼルの背中に重ならず河村の動きも見れる正しいポジションにいました。あのプレーをもっとも近くで見ていたので、確固たる自信を持って吹いたのでしょう。しかし、インパクトではありませんでした。近年、シューティングファウルについては、より厳しく見るという傾向がありますが、だが、この場合は、もっと慎重に判断すべきでした」
 オフェンスがシュートを放つ際にディフェンスがやってはならないシューティングファウルには「押す」「ぶつかる」「引っ張る」「押さえる」「叩く」といった行為があり、近年は、手を伸ばして自分の方から触れるだけで、ファウルと認定されるほど、判定基準は厳しい。それでも、この場面では河村は、まったく触れていないように見えた。また各チームには1度ずつ「チャレンジ」という映像検証を求める権利がある。すでにトム・ホーバス監督は、第2Qに一度、使ってしまっていたが、シューティングファウルについては「チャレンジ」を要求することができないというルールになっている。

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