「私が審判なら笛は吹かない。ただし…」パリ五輪男子バスケで大金星を逃した河村勇輝への“疑惑のファウル判定”は本当に“誤審”だったのか?
だが、この元bjリーグ審判は、「ただし」という注釈をつけた。
「あの場面だけを切り取ると、ファウル判定は間違っていたと思いますが、ゲーム全体の流れを見ると、接触が微妙であってもファウル判定が下されてもおかしくないという試合でした。レフェリーの立場から見ると、あの判定は決して誤審ではなく理解できるという流れがありました。実は、ゲームの序盤に布石があったのです」
同氏が指摘したのは、序盤にNBAのティンバーウルブスに所属している年俸65億円プレーヤーのルディ・ゴベアがディフェンスで渡邊雄太に手を伸ばしてファウルを取られた場面だ。
「これもファウルを取るかどうか微妙なプレーでしたが、『今日は手を出したらファウルを取りますよ』という基準をレフェリーが示したシーンだったんです。もちろんレフェリングは、ルールに従って行われるものですが、人が判断するものなので、何をどれくらいの基準でとるか、という微妙な線引きが、試合ごとに変わります。今日は、ここに厳しい、ここに甘いという微妙な“ゆれ”が、やはり出てくるんです。この試合は、決してフランスびいきではなく、むしろ日本びいきに笛を吹いているようにさえ感じましたが、手を出すプレーに対しては、終始、厳しい見方をしていました。河村選手は、あの場面で、ストラゼルをマークしてからは、ずっと手を出し続けていました。その時点でもう女性審判は笛を吹く準備をしていたのです。そういうレフェリー目線でみると決して誤審とは言えないのです」
さらに、こう付け加えた。
「今はアナリストが、レフェリーの傾向もしっかりと分析して、試合中に指示をしますが、河村選手の意識にそれがあったかどうか。スリーポイントシュートを決められても1点のリードがあります。ファウルを取られる危険を回避するために、もっと離れてディフェンスをしていても良かったのではないでしょうか」
両チームを通じて最多得点となる29点をマークする活躍で、フランスを土壇場まで苦しめた河村は、試合後に「自分たちが勝てるゲームを落としてしまった。自分のポイントガードとしてのコントロール不足。大事なクラッチ(チャンス)の時間にプレーをコントロールできなかったことが悔しい」と言い、言葉に詰まった。
この“疑惑の笛”の意味を最も深刻に受け止めているのは河村だったのかもしれない。まだ決勝ラウンドへ進出の可能性は残っている。日本は8月2日にブラジルと1次リーグの最終戦を戦う。