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西田有志がアルゼンチン戦の第1セットにサーブで5本のエースを決めて勢いをつけた(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)
西田有志がアルゼンチン戦の第1セットにサーブで5本のエースを決めて勢いをつけた(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

「フェイクセット効果と石川祐希の“グー”ブロック」なぜパリ五輪で男子バレーはアルゼンチンに快勝して息を吹き返すことができたのか?

 パリ五輪バレーボール男子の1次リーグ第2戦が31日、パリ南アリーナで行われ、日本が3-1で東京五輪銅メダルで世界ランキング8位のアルゼンチンに快勝し、グループCの2位に浮上した。初戦で格下のドイツに敗れ、同ランキングを2位から5位へ下げていた日本は第1、2セットを連取。第3セットこそ落としたものの、第4セットを接戦の末に制した。精神的に追いつめられた日本はなぜ復調を遂げ、大会初勝利をあげたのか。日本は準々決勝r進出をかけて、日本時間3日未明に米国と対戦する。

 “リアル”ハイキュー

 パリ南アリーナに期せずして日本語のコールが鳴り響いた。
「ニシダ、ニシダ、ニシダ――」
 日本が誇る左の大砲、西田有志がサーブを放つたびに場内が揺れる。第1セットだけで5本を叩き込んだ強烈なサービスエースが、パリへ駆けつけた日本人ファンを中心としたコールを自然発生させた。
 黒星発進した日本をけん引した西田を、国際バレーボール連盟(FIVB)は公式サイトで「unstoppable(止まらない)」と称賛した。
「止まらない西田が日本を立ち直らせ、アルゼンチン撃破に導いた」
 試合後のフラッシュインタビュー。西田は「僕のホームみたいで、本当にありがたいですね」とコールに感謝しながら、会心の笑顔を浮かべた。
「1勝が遠かったというか、3試合しかない1次リーグで1勝するのがどれだけ難しいのかを、初戦で身にしみて感じました。今日も難しい試合でしたけど、こうした逆境でいつも戦ってきたのが自分たちなので」
 フルセットの末にドイツとの初戦で逆転負けを喫した日本にとって、アルゼンチン戦は絶対に負けられない一戦だった。精神的に追いつめられ、重圧もかかる第1セットを、西田にけん引された日本は25-16と制した。
 元日本代表で、現在は姫路獨協大学の女子バレー部コーチを務める山本隆弘氏は、東京五輪銅メダルのアルゼンチンを圧倒した第1セットを「ドイツ戦の敗戦を引きずらずに、気持ちが切り替わっていた」と総括した。
「ミーティングを開いたという報道を見たが、個々で戦うのではなくてチーム全体で戦えていた。リベロの山本選手を筆頭にリサイクルの意識が高く、粘り強いバレーができた。多少の堅さはあったが、守りに入るのでなく1セット目から攻めたのが大きかったと思う。その象徴が西田選手のサービスエースの5本。勢いに乗せたし、もう負けられないというプレッシャーもあったはずのチームを勇気づけた」
 一転して第2セットは、最大で7点差をつけられた。
 それでも9-16の場面から5連続得点をあげるなど、日本が一気に盛り返した要因を、山本氏はセッター関田誠大とミドルブロッカー小野寺太志のホットラインにあげた。
「3連続でブロックを決められ、嫌な流れがあったが、関田選手が積極的に小野寺のミドル攻撃を使い、サイドアウトを確実に取ったことが大きかった。ドイツ戦では、ミドルのクイック攻撃でやられたという反省もあったのでしょう。小野寺選手の90%の数字はなかなかない成功率。関田選手との信頼関係のたまもので、真ん中が機能したため、高橋のバックアタックも決まりはじめた」
 第2セットでは16-18で迎えた場面で、秘密兵器フェイクセットから得点もあげている。キャプテンの石川祐希がバックアタックを打つと見せかけて、瞬時にトスに切り替えて、ライトから西田が決める、という人気漫画『ハイキュー!!』の世界が再現された超絶コンビネーションを、山本氏も称賛している。

 

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