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西田有志がアルゼンチン戦の第1セットにサーブで5本のエースを決めて勢いをつけた(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)
西田有志がアルゼンチン戦の第1セットにサーブで5本のエースを決めて勢いをつけた(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

「フェイクセット効果と石川祐希の“グー”ブロック」なぜパリ五輪で男子バレーはアルゼンチンに快勝して息を吹き返すことができたのか?

 

「あれで会場のボルテージが上がり、流れが完全に日本にきた。彼らにすれば当たり前のプレーだが、“リアル”ハイキューだし、元々このプレーはフランスのヌガペトが考案したもので、フランスの会場でやるとファンの心をつかむことができる。ホームの雰囲気を作るのも国際試合では重要なポイント。ドイツ戦ではやろうとして重なったことがあったが、それほどプレーに余裕が出てきていたという証拠でしょう」
 フィリップ・ブラン監督は、フラッシュインタビューでこう語っている。
「アルゼンチンも負けたら終わりなので、タイトですごく厳しい試合になったが、日本はコートのなかでしっかりと切らさずに戦い続けられた」
 この「切らさずに」が何を意味しているのか。20-20と追いつかれた直後。映像判定に抗議したアルゼンチンのファクンド・コンテ(35)に、イエローカードが提示された。その後も不満が収らなかった様子を見た審判が、今度はレッドカードを提示。日本に逆転の1点が入り、最終的に25-22で制した展開に会場が騒然となった。
 山本氏はアルゼンチンがチャレンジを敢行するも、映像判定の末にノータッチと判定された場面で、石川がとっさに見せた「グーブロック」と、身長175cmの関田が1対1のブロックで決めたマッチポイントを称賛した。
「レッドカードで得た得点自体はそう関係はないが、アルゼンチンがチャレンジしたあのプレーでは、石川選手がグーブロックをしていた。アルゼンチンは高さがなく、ブロックアウトやワンタッチを使ってくるチーム。ジャンプした瞬間にスパイカーの目線やフォームからどこを狙ってくるかを察知してのオプション。そして、低く来てもグーでブロックできる態勢も整えていた。宮浦(健人)選手らもその後、グーブロックを使ってきたが、もし手の平を開いていれば、ワンタッチをしていたでしょう。細かく指先を狙ってくる相手の狙いを外す技ありの1本だった。関田選手のブロックはスパイカーが打つ瞬間に手を出すので、相手から見えにくい。練習の積み重ねと経験のたまものです」
 第3セットは18-25で落とした。山本氏は「守備のいいマルティネスを投入することでサーブレシーブを固められ、リズムを作り直された」と要因を分析するとともに、高橋藍(22、サントリーサンバーズ大阪)のプレーに注目している。
「アルゼンチンは勝ち点を取らなければ1次リーグ敗退が決まるため、攻めるしかないという状況も手伝ってサーブで攻めてきた。加えて世界的セッターであるデセッコのトスワークがさえた。1、2セットに使った真ん中のミドル攻撃を布石にワイドで揺さぶってきた。ミドルへのクイックトスと、ほぼ同じタイミングと軌道でトスを伸ばしてくるので、日本のブロックが左右に走らされて揺さぶられた。彼の上手さに翻弄された。そのなかでも、高橋選手はしっかりと守り、チームプレーを徹底していた。今大会ははっきり言って本調子ではないが、攻撃以外で自分がすべきことは何かを考えていた。個ではなくチームプレーを心掛けた象徴だった」

 

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