「あなたの左手は大丈夫か?」パリ五輪卓球女子シングルス準決勝で早田ひなが世界ランク1位の中国女王にストレート負けを喫した理由とは?
パリ五輪卓球の女子シングルス準決勝が2日、パリ南アリーナで行われ、世界ランキング5位の早田ひな(24、日本生命)が同1位の孫穎莎(23、中国)に0-4でストレート負けを喫した。前日の準々決勝でピョン・ソンギョン(23、北朝鮮)との1時間を超える死闘を制した影響で利き腕の左手を痛めていた早田は最初から最後まで精彩を欠いた。コンディションに不安を抱えたまま、銅メダルをかけて今日3日、シン・ユビン(20、韓国)との3位決定戦に臨む。
コンディションは100%じゃなかった
コンディションに不安を抱えた状態で勝てるほど、絶対女王は甘くなかった。
瞬く間に3ゲームを連取され、後がなくなった第4ゲームでは2-2から9連続ポイントを奪われて試合が終わった。試合時間は39分。これまでの対戦成績が15戦全敗だった同じ2000年生まれの孫穎莎の厚い壁に、またもやはね返された。直後のフラッシュインタビュー。早田は涙をこらえながら声を振り絞った。
「自分のコンディションが100パーセントじゃなかったので、そこでどこまで勝負するか、という感じでしたけど……さすがに限界を感じましたけど、それでも最後までしっかりとプレーできてよかったと思っています」
早田の利き腕の左手には、ひじから手首にかけて黒いテーピングが何重にも巻かれていた。あまりにも痛々しい姿は、北朝鮮の伏兵、ピョン・ソンギョンとの1時間を超える死闘を制し、ベスト4進出を決めた前日1日には見られなかった。
フルゲームにもつれ込んだ準々決勝で、世界ランキング5位の日本のエースに何らかの異変が生じていたのは明らかだった。報道では試合中に左腕に違和感を覚えはじめ、患部のケアや痛み止めの薬を服用して準決勝に臨んだという。
現役時代は、日本代表のエースとして活躍し、1992年のバルセロナ五輪から4大会連続で五輪に出場している松下浩二氏(56)は、テーピング姿でプレーした早田を「いつになく精彩を欠いていた」と振り返っている。
「孫穎莎選手が強すぎた、というのもありましたけれども、それでも早田選手にいつもの思い切りのよさがなかった。普段はもっともっと歯切れのいいプレーをするんですけど、試合中にちょっと手首を気にしているというか、かばっているような感じにも見受けられた。何もなければあそこまでテーピングはしない。実際に戦った孫穎莎選手も異変を感じ取っていたからか、試合が終わって握手をしているときに、左手首は大丈夫か、みたいなジェスチャーで早田選手に話しかけていましたからね」
実際に6-11だった第1ゲームに続いて、第2ゲームを8-11で落とした後のインターバルには、早田は左手首を気にするしぐさを見せている。しかし、左腕の不安を差し引いたとしても、世界ランキング1位の座に2年以上も君臨する卓球王国・中国のエース、孫穎莎が築きあげた壁は高く、そして険しかった。
攻守両面で圧倒的な強さを見せた孫穎莎を松下氏も「つけいる隙がまったくないと言っていいほどの強さだった」と評価した。
「すべてにおいて技術のレベルが高い。サーブレシーブも厳しいし、ラリーになってもほとんどミスをしない。早田選手がよほどいいボールを決めない限りは、ちょっと難しいかな、という展開でした。第4ゲームはいろいろな要因が重なったかもしれませんけど、それでもあそこまで続けてポイントを失う早田選手を見たことがない。パリ五輪も初戦から1ゲームも落とさずに勝ち進み、そして早田選手との準決勝でも4-0のストレート勝ちですからね。悔しいですけれども、完敗だったと思います」