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日本がスペインに0-3で完敗…細谷の幻ゴールが悔やまれる(写真:森田直樹/アフロスポーツ)
日本がスペインに0-3で完敗…細谷の幻ゴールが悔やまれる(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

「スペインとの決定的なサッカー技術の質の違い」城彰二氏が語る日本代表がパリ五輪で8強の壁を越えられなかった理由

 

 スペインにワンステージ上の力の差を見せつけられた。
 今回の五輪代表は、個の力を持つメンバーが揃い、パラグアイ、マリといった南米、アフリカの強豪を無失点で倒してきたので、メダルを狙える好チームだと評価していた。しかし0-3で敗れたスペインはさらにワンランク上だった。
 日本とスペインのサッカーの何が違ったのか。
 そこに注視していたが、ボールコントロール、トラップ、パスの出し方という基本技術の質に大きな差があった。

 不運だった幻のゴール

スペインの選手は、360度、どこでもボールを止めることができ、体の向きを変えながら、相手が右からボールを奪いにくれば左へ、左からくれば右へと必ず逆にパスを出す。しかも相手のタイミングをずらしながらだ。
 だが、日本の選手は、ボールを迎えにいき、前方向にボールを止めて、パスを出す方向も無造作だ。相手が右から来ても、平気でその方向にパスを出してプレッシャーがかかりミスにつながるようなケースも少なくない
 その差が、如実に出たのが、前半11分にフェルミン・ロペスに先制のスーパーミドルシュートを決められたシーンだ。
 山本理仁からのパスを受けた三戸舜介は、右からスペインの選手が来ていたが、右へボールを出そうとしてパスミスを犯した。危険な地域で、ボールを失い、先制点につなげられた。
 バルセロナ、レアル・ソシエダなどスペインのトップクラブでプレーしている彼らとは、生まれ育ったサッカー環境が違ったと言えば、それまでだが、決定的な感覚の違いがある。
 日本は、一度、ボールをコントロールしてから、相手がディフェンスにくると外すというテンポ。しかし、スペインの選手は、それを同時にできる。だから速いパス回しが可能で、いくらプレッシャーをかけてもパスがぶれない。
 1次リーグの3試合を無失点できた日本のディフェンスが崩れた理由もそこに起因する。ここまでは前線からプレスをかけてボールの獲得位置を決めるというコンパクトな組織的ディフェンスがずっと機能していた。ディフェンスラインもコントロールされていた。
 だが、この日は、プレスをかけても、ボールの獲得位置を見失うほど、スペインのパスが速く、対応に苦労した。そのうちギャップが生まれ、そこを突かれた。パラグアイ、マリよりも1枚上の相手と戦うと、こういう現象が起きてしまう。それほど、スペインのサッカーの質が高かったということだが、メダルを狙うのであれば、このレベルのサッカーに対抗できなければならない。
 スペインのしたたかな“駆け引き”にもやられた。
 後半28分にコーナーキックから、またしてもロペスに強烈なミドルを決められた2点目は、デザインされたプレーだった。日本はゴール前に人数をかけた。“中”が怖かったのだろう。だが、これはそこに人を集めさせ、ゴールの真正面のペナルティエリアの外で構えていたロペスをフリーにさせるためのトラップだった。本来ならば、ロペスを関根大輝か、藤尾翔太がケアしておかねばならなかった。コーナーキックをワントラップで受けてミスをせず決めきるロペスの技術も凄いが、日本は、そこまでの注意が行き届いていなかった。
 不運もあった。前半41分にVARの末にオフサイドの判定で取り消された細谷真大の幻のゴールである。ディフェンスからすれば完全に意気消沈するゴール。だがスペインのキャプテンが審判に確認を要求したのだろう。ああいう相手ディフェンスを背負うポストプレーで、足が飛び出すなど、なかなかない出来事。しかし、相手は真後ろからではなく、やや左側から細谷に体を押し付けてきた。そのため細谷の体が斜めになって、ほんのわずか右足がオフサイドラインから出たのだ。これは意図的なプレーではなく不運だったと思う。もし幻に終わっていなければ、その後の展開は大きく変わっていた可能性はある。

 

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