パリ五輪男子100m予選で“日本人五輪最高記録”10秒02をマークしたサニブラウンは日本勢92年ぶりのファイナリストとなれるのか?
パリ五輪の陸上男子100mの予選が2日、スタッド・ド・フランスで行われ、2度目の五輪出場となるサニブラウン・アブデル・ハキーム(25、東レ)が五輪での日本人最高記録となる10秒02で準決勝進出を決めた。また東田旺洋(28、関彰商事)と坂井隆一郎(26、大阪ガス)は予選を突破することができなかった。
準決勝のライバルには9秒台が揃う
3年前の東京五輪は出場した3人全員が予選で敗退した日本の男子100m。パリでも、厳しい戦いが待っていた。日本選手権で2位に食い込んだ東田旺洋(関彰商事)は1組で10秒19(+0.6)の5着。
「完璧な走りではなかった。走力差もあって(力を)出し切れなかった」と初の世界大会に翻弄された様子だった。
日本選手権を連覇した坂井隆一郎(大阪ガス)も7組で10秒17(+0.3)の5着と苦しんだ。持ち味のカミソリスタートを発揮するも中盤以降は伸びなかった。
「9秒台を目指していたのでタイム的には足りなかった。状態自体は良くて、レースも悪くなかったんですけど、世界で通用する実力ではなかったかなというのが正直な感想です」と坂井。日本歴代7位タイの10秒02の自己ベストから大きく遅れたかたちになった。
五輪の雰囲気に飲まれた日本勢のなかで、唯一、世界に悠然と立ち向かった男がいる。サニブラウンだ。
4組に登場すると、大観衆のなかで堂々とした走りを披露する。低い姿勢から飛び出して、序盤からトップ争いを繰り広げた。終盤は横を確認して、フィニッシュ。O・セヴィル(ジャマイカ)に先着(9秒99)を許したが、10秒02(±0)の2着で悠々と予選を通過した。
このタイムはリオ五輪の準決勝で山縣亮太がマークした10秒05(+0.2)を上回るオリンピック日本人最高記録だった。
レースを終えたサニブラウンは、「まずまず1本いい感じで走れたので良かったと思います」と話すと、五輪日本人最速タイムについては、「何も考えていないです、はい」と笑みを浮かべた。
世界選手権の男子100mは2年連続でファイナルに進出しているだけに、「今日は本当に楽々なので、明日は戦いにいく感じで、しっかり集中していければと思います」と余裕のコメントを残した。
そして準決勝のポイントについては、「みんな全力で走ると思うので、プレッシャーを感じずに、自分の走りができれば決勝にいけると思う。落ち着いてしっかりコンディショニングしていければな、と」と語っていた。
予選の「レース内容」は非常に素晴らしかったと思う。今季は課題にしてきた「スタート部分」に手応えを感じているが、五輪の舞台でも作ってきた技術をしっかりと発揮した。さらにリアクションタイムも4組で最速となる0.138秒だった。
テレビ解説を務めた高平慎士氏も「スムーズに流れていたと思いますね。低い姿勢から中間疾走に向けての良いスタートが切れていた。後半も落ち着いて、自分の走りができていたと思います」と評価した。
では、サニブラウンは決勝に進出することができるのか。
準決勝は日本時間の8月5日03時05分から。すでにスタートリストが発表されており、サニブラウンは最終3組に入った。決勝進出の条件は各組上位2着+タイム上位者2名となる。