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全敗で予選リーグで敗退となり馬瓜エブリン(左)と宮崎早織が涙する(ⒸFIBA)
全敗で予選リーグで敗退となり馬瓜エブリン(左)と宮崎早織が涙する(ⒸFIBA)

東京銀がなぜ全敗?「渡嘉敷を外したことが敗因ではない」…パリ五輪女子バスケットで日本がベルギーに完敗し予選リーグ敗退

 

「ひとつは山本がアメリカ戦で脳震盪を起こしてドイツ、ベルギー戦に出られなかったこと。日本のバスケットはローテーションディフェンスと呼ばれる、前からどんどんプレッシャーをかけてボールを奪い、スピードを生かして、かきまわして、スリーポイントシュートで加算していくスタイル。銀メダルを獲得したホーバスHCのスタイルを恩塚HCが踏襲したものだが、それにはやはりスリーを決められるスコアラーが不可欠で、今大会では山本がそのスペシャルな能力を持つ選手だった。
 脳震盪を起こした選手の健康を守る規定で、彼女が出られなくなったのが痛かった。高さのある渡嘉敷をメンバーから外したことが議論になっているそうだが、高さはあるもののディフェンスや運動量の落ちる彼女を外した理由は理解できる。むしろ痛かったのは、渡嘉敷の不在ではなく山本の欠場だ」
 アシスタントコーチとして銀メダルを獲得したホーバス体制を支え、東京五輪後にHCへ昇格した恩塚亨氏(45)は、パリ五輪に臨む女子代表の基本コンセプトとして「走り勝つシューター軍団」を掲げてきた。
 右ひざの故障で東京五輪出場を断念した渡嘉敷は、恩塚HC就任後で代表復帰を果たしているものの、最後にプレーしたのは昨年6月のカナダ遠征までさかのぼる。パリ五輪出場を決めた今年2月の世界最終予選を含めて、渡嘉敷を選外とした陣容で戦ってきた恩塚体制での軌跡を踏まえて、前出の専門家はこう語る。
「渡嘉敷を入れるなら彼女用のチームプランが必要で、それはチームの引き出しを増やす意味で重要なことだった。しかし、それをブラッシュアップする機会が少ないというチームが置かれた環境もあるだろう」
 そのうえで、日本がパリ五輪で結果を出せなかった2つ目の原因を「日本が銀メダルを獲得したことで、他チームから研究し尽くされたことにある」と指摘する。
「現在はアナリティクスバスケットが主流。日本の激しいディフェンスにつかまらないように、ドイツやベルギーはパスの球離れを早くして、ボールをポンポンと動かす工夫をして、日本のディフェンスへ対策していた。こうなると日本はさらに運動力を求められ、いくらスタミナを強化して、運動力とスピードを武器にしたといっても、疲労からスリーの成功率は下がる。チームの運動量をキープするため、恩塚HCはうまくローテーションで選手を交代させていたが、やはり限界はあった」
 実際に林はフラッシュインタビューで、世界から追われる立場に変わったパリ五輪で痛感した点として、対戦各国のレベルアップをあげている。
「自分たちは追われる立場でしたけど、新しいバスケットボールになったなかで、追う立場で戦おう、という気持ちがありました。それでも、世界は日本と戦う点でレベルアップしてきた、という感覚を今回の五輪ですごく味わいました」

 

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