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岡慎之助が種目別の鉄棒で金メダルを獲得。団体、個人総合に次ぐ3つ目の金メダルだ(写真:西村尚己/アフロスポーツ)
岡慎之助が種目別の鉄棒で金メダルを獲得。団体、個人総合に次ぐ3つ目の金メダルだ(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

同点なのになんで金?パリ五輪体操で52年ぶりの鉄棒、団体、個人総合「3冠」達成の“超新星”岡慎之助は“キング”内村航平氏を超えることができるのか?

 パリ五輪男子体操の種目別決勝の平行棒と鉄棒が行われ、団体、個人総合で“2冠”の岡慎之助(20、徳洲会)が、鉄棒で今大会3つ目の金メダル、平行棒でも銅メダルを獲得した。3つ以上の金メダルは、1972年のミュンヘン五輪の加藤澤男氏以来、52年ぶり史上5人目の快挙となった。あの“キング”内村航平氏でさえ、五輪で獲得した金メダルは2大会で3つ。岡は内村氏を超えることができるのか。

 同点もEスコアで上回り金「奇跡ですね」

 NHKのアナウンサーから「金メダルを見せて下さい」とリクエストされた岡は、「へへへ」と声を出して笑いながら、誇らしけに首に下げたメダルを示し、聞かれてもいないのに自ら「奇跡ですね」と切り出した。
「最後、何が起こるかわからないってところで、ミスなくやりきれたことが金メダルにつながったのかなと思っています」
 まさにその分析通りだ。
 “ミスターノーミス”の演技が奇跡を生み出した。
 岡の鉄棒の演技順は2番目だった。アドラー1回ひねりからスタートし、コールマン、伸身トカチェフ、トカチェフという離れ技をクリアし、最後は伸身のルドルフ(後方伸身2回宙返り2回ひねり下り)。少しだけ足が開いたが、まるで接着剤が足裏についているかのようにピタリと着地を決めた。
 得点はDスコア(難易点)が5.9で、Eスコア(出来栄え点)が8.633で、14.533点、金メダルを獲得した団体の14.433点、同じく金メダルの個人総合での14.500点を上回る好得点だった。
 アトランタ五輪代表で現在日体大体操競技部部長の畠田好章氏は、「団体、個人総合を通じて、最もいい鉄棒の演技でした」と評価した。
「個人総合よりもアドラー系演技の収め方が良かった。伸び伸びと演技できていました。離れ技のこなしも良かった。前方からの映像では、コールマンの持ち手のタイミングが遅れたように見えましたが、横からのアングルで見るとベストポジションに近い位置でした。ギリギリで持った方が肘の曲がりが少なく減点も少ないんです。そして着地が素晴らしかった」
 続くアンヘル・バラハス(コロンビア)は、Dスコア6.8を持つが、少しだけ難易度を下げてきた。G難度のカッシーナに、コバチからコールマンの連続の離れ技を成功させるなどしたが、着地が、ほんの少しだけ後ろに跳ねた。結果、Dスコア6.6、Eスコア7.933で、14.533点。岡と同点だったが、タイブレークルールにより、この場合、Eスコアの優劣によって順位が決められるため、8.633で上回った岡が暫定1位となった。
 あとは残り5人の競技者の結果待ちという展開だった。
 4人目のマリオス・ヨルギウ(キプロス)は着地で前のめりに倒れた。5人目の杉野正尭は、大技のペガンが片手となり、カッシーナで落下した。そして最大のライバル、個人総合銀メダルの張博恒(中国)が、着地で前方へ転びかけるほどの大失敗。13.966点しか出なかった。7人目のテイン・スルビッチ(クロアチア)も落下。8人目の蘇煒徳も、着地で手を着くほどに乱れた。団体の鉄棒で2度落下し、日本に大逆転を許した“トラウマ”を払拭できず13.433点に終わった。ライバル達に起きた“ミスの連鎖”に助けられ、唯一のノーミスの演技者だった岡に、金メダルが転がり込んできたのである。

 

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